ユーロ2004唯一全勝で評価上げるスペイン ヤマル&ニコ全開でジョージア戦も慢心なし (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【大会屈指のサイドアタッカー】

 カタールW杯後に就任したデ・ラ・フエンテ監督は、特徴がないと言えばない。しかし、ユース年代で代表を指揮し、U-19、U-21欧州選手権で優勝、東京五輪では準優勝するなど、多くの選手を育成から知る利点を生かしている。また、自分の色よりも活躍している選手を優先。「いい守備はいい攻撃を作る」というバランス型で、そこはデル・ボスケに似ているか。2023年はユーロ予選を突破し、ネーションズリーグでも優勝。質朴な采配で強さを取り戻した。

 何より、いまのスペインは人材に恵まれている。なかでも両サイドのアタッカーの破壊力は大会屈指だ。

 右サイドのヤマルはスピード、テクニックに優れ、ウィングプレーにとどまらない。カットインしてのシュートや連係で相手ディフェンスを幻惑。クロアチア戦ではヨシュコ・グバルディオルに悪夢を見せ、ダニエル・カルバハル(レアル・マドリード)にピンポイントのクロスを合わせてゴールをアシスト。得点機会創出の精度は並外れ、年齢を考えたら、「史上最高傑作のアタッカー」と言えるだろう。

 ヤマルはバルサの下部組織「ラ・マシア」育ちで、リオネル・メッシの系譜で育てられた。しかし、ドリブルのリズムはメッシのような単騎で敵陣へ斬り込む激しさではなく、ブラジル人のサンバのようなおおらかさと自由が内在し、捉えどころのなさにスペクタクルを感じさせる。左利きにしたロナウジーニョ、ネイマールに近いか。

 一方、左サイドの21歳のニコ・ウィリアムズ(アスレティック・ビルバオ)はアスレティックの下部組織「レサマ」で兄イニャキとともに育っている。アスレティックはバスク人純血主義で知られるが、レサマで育った選手も含まれる。兄はガーナ代表を選んだが、ニコはスペイン代表を選択した。

 スプリントが武器で、高速プレーでも技術が落ちない。イタリア戦はジョバンニ・ディ・ロレンツォを圧倒。どちらかと言えば、縦を突っきるクラシックなウィングプレーが魅力だ。

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