EURO名場面 攻めるオランダ、守るイタリア...欧州サッカーの真髄を見た (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【W杯より外れの試合が少ない】

 日本は翌年、ジョホールバルでイランを破り、1998年W杯フランス大会に初めて出場した。それまでのW杯本大会に日本は存在しなかった。日本が出場していると、どうしてもそちらに気を取られる。観戦取材の旅はいやでも日本戦ありき、日本中心になる。

 それがEUROの旅にはない。しかもこの時の出場国は16なので、W杯よりレベルは拮抗していた。出場国が24チームで争われたEURO2016は、出場国間の格差が広がった気がするが、EUROの魅力は競った試合の多さにある。外れの試合が少ないのである。

 ウェンブリーで行なわれた決勝戦には、ドイツとチェコが駒を進めた。チェコが先制。ドイツが追いつき、延長戦に突入する競った試合となった。筆者が観戦していたのは記者席の最前列で、その前の予備席にはドイツ代表選手の奥様集団が陣取っていた。きれいな人たちではあるが、全体的に体格がよく、そして興奮しやすいので、こちらの視界を遮ることしばしば。延長に入ると興奮はピークに達し、ほぼ立ちっぱなしの状態となった。そうしたなかで事件は起きた。

 延長5分、ドイツはオリバー・ビアホフがゴールを決める。延長Vゴール制が採用されていたので、その瞬間、ドイツの優勝となったわけだが、その前のプレーで、副審がオフサイドフラッグを一瞬、挙げていたことも事実だった。今ならVARが介入するところだろうが、当時は何事もなくそのままドイツの優勝で決着した。チェコ側も激しく抗議をしたわけではなかった。判官贔屓の筆者には、大喜びする奥様集団が少々、鬱陶しく思えた。

 UEFA選定ベストイレブンは以下のとおり。

 GKアンドレアス・ケプケ(ドイツ)、DFローラン・ブラン、マルセル・デサイー(ともにフランス)、マティアス・ザマー(ドイツ)、パオロ・マルディーニ(イタリア)、MFポール・ガスコイン(イングランド)、ディーター・アイルツ(ドイツ)、カレル・ポボルスキー(チェコ)、FWアラン・シアラー(イングランド)、フリスト・ストイチコフ(ブルガリア)、ダボル・シューケル(クロアチア)。

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