忘れられないEUROの名シーン ファン・バステンのボレーシュートはサッカー史に残る一撃になった (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【ビッグネームが揃っていたオランダ】

 スーパーゴールといえば、ディエゴ・マラドーナの60メートル5人抜き(1986年メキシコW杯、アルゼンチン対イングランド戦)、ロベルト・カルロスの左足FK(1997年トゥルノワ・ド・フランス、フランス対ブラジル戦)、ジネディーヌ・ジダンの左足ボレー(2001-02チャンピオンズリーグ決勝、レアル・マドリード対レバークーゼン戦)などを想起するが、切れ味の鋭さという点では、このファン・バステンの一撃が一番だ。

 先制点はルート・フリットが決めていた。後方にはフランク・ライカールト、ロナルト・クーマンが構えていた。フリット、ライカールト、ファン・バステンの3人組は、ミランで翌シーズン(1988-89)と翌々シーズン(1989-90)連続して欧州一に輝いた。またクーマンも、バルセロナで1991-92シーズンに欧州一のタイトルを獲得している。この時のオランダほどバロンドール級のビッグネームがゴロゴロしていた代表チームも珍しい。

 当時、取材していて恐怖に感じたのはサポーターだ。フーリガンと呼ばれる荒くれ者にたびたび遭遇した。1988年の欧州選手権では朝方、夜行列車でデュッセルドルフ駅に降り立てば、イングランドサポーターが構内を占拠するように、ところ狭しと横たわって寝ていた。ビールの空き缶が散乱し、窓ガラスが割られるなど、暴れた痕跡をいたるところで確認することができた。誤って寝ている彼らを踏んでしまわないか、目一杯慎重に歩いたものである。

 1988年欧州選手権。UEFA選定のベスト11は以下のとおりだった。

 GK ハンス・ファン・ブロイケレン(オランダ)、DFジュゼッペ・ベルゴミ、パオロ・マルディーニ(ともにイタリア)、クーマン、ライカールト(ともにオランダ)、MFジュゼッペ・ジャンニーニ(イタリア)、ヤン・ボウタース(オランダ)、ロタール・マテウス(西ドイツ)、FWジャンルカ・ビアリ(イタリア)、ファン・バステン、フリット(ともにオランダ)。

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