中井卓大、王者レアル・マドリードに復帰するも...プロとして価値が問われる正念場に (3ページ目)
「3部リーグは肉弾戦で、ピッチも荒れている。もっとボールをつなげる環境、高いレベルで、中井の技術的アドバンテージが生きるのでは?」
それもひとつの正論だろう。そうしたケースがないわけではない。
たとえば久保建英も、これまでで最もレベルの高いレアル・ソシエダで、ダビド・シルバのような天才と遭遇し、最大限に能力を引き出された。ただし、残留を争うマジョルカでも定位置を取っていたことを忘れるべきではない。フィジカル的な要求が高かったウナイ・エメリ監督のビジャレアルでは苦労したが、ヨーロッパリーグの決勝トーナメント進出に貢献していた。
3部の最下位チームで通用しない、では話にならない。体格や舞台の問題ではないだろう。17歳だったアンドレス・イニエスタは、中井よりも細身で小柄だったが、3部で大人たちを手玉に取っていたのだ。
ひとつ言えるのは、レアル・マドリードは王の中の王のクラブである。這い上がってこない選手に構っていられないということだ。最悪の場合、契約満了前に売り払う可能性も否定できず、ローンのまま買い取りオプションを付けたバイアウトもあり得る。
中井は「レアル・マドリードの日本人選手になる」という夢と向き合う。今も可能性で言えば、誰よりも近い場所にいることも間違いない。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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