岡崎慎司は第二の人生も「ダイビングヘッド」で サッカー人生が詰まった現役最後の51分間 (2ページ目)

  • 了戒美子●取材・文 text by Ryokai Yoshiko

【引退試合であってもスタイルは変わらない】

 言葉で訴えただけでなく、プレーを見て判断してほしいと伝え、その結果として勝ち得た51分間。欧州でのサッカー人生が詰まっていた。

「ずっとこうやって、そういう生き方をこのヨーロッパでやってきたなと思ったんで。最後までやりきるって意味では、なんか"らしい"終わり方だったかと思いますし、さらにああいうふうにやってもらえるのも想像しなかったんで。相手チームにまでやってもらえてっていう。本当にいい終わり方ができたと思います」

 ああいうふうに──とは、ピッチを退く際に両チームの選手が試合を中断し、花道を作って送り出したこと。試合中に花道を作った首謀者は控えのGKジョー・コッペンズ。彼のおかげで、岡崎は笑顔でピッチを去ることができた。

 しかし、プレーそのものには、悔いが残った。

「いやー、本当に最低限のプレーしかできかったなと思うので。やっぱこう、なんて言うんですかね......こうしておけばよかったなとかっていうプレーもいっぱいあるし、こう動けばよかったなとか。まあ、その連続でやってきたので、今日も試合に入っちゃえばその連続だった」

 岡崎はどんな試合後でも、自分の行為を振り返り、反芻し、言語化して消化してきた。引退試合であっても、それは変わらないようだった。また、こうも振り返る。

「ただ、最後の最後にこうやって日本の選手たち、周りにいてわかり合える選手たちのなかでやれたので、うれしかったですね。プレスのタイミングとかもそうだし、一緒にやれている感はあったので。理想は自分が1トップに入って、選手たちを引っ張って自分が点を量産して、というのが理想だったと思いますけど」

 日本人とのプレーをうれしかったと振り返るのは、少し意外に感じられた。

 岡崎は2011年にドイツ1部シュツットガルトに加入し、2チーム目となったマインツではのちに名将となるトーマス・トゥヘルに愛され、欧州主要リーグで1シーズン日本人最多の15得点を決めた。

 2年連続ふたケタゴールの実績を引っ提げて移籍したプレミアリーグのレスターではリーグ優勝も経験し、チャンピオンズリーグにも出場した。スペインではチームを昇格させて、1部リーグでも戦った。そんな華々しいだけでなく、多岐にわたる経験を積んだキャリアの最後を、ベルギーのシント・トロイデンで迎えた。

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