堂安律、野中生萌らのマネジメントが仕掛けるマーケティング革命「スポーツの価値は勝ち負けがすべてではない」 (3ページ目)

  • Text by Sportiva

――具体的なイメージはありますか。

「レッドブル在職時の2017年に企画したキャンペーン『Jason Paul Goes Back in Time』がわかりやすいかもしれません。〝現代の忍者〟とも言われるパルクールのアスリートを江戸にタイムスリップさせ、日本の忍者と戦わせるというコンセプトの動画ですが、現在、YouTubeで3330万回再生されています。

 日本が大好きなドイツ人アスリートと密にコミュニケーションを取り合ったこと、パルクールの魅力を熟知していたことで生まれたアイデアでした」

――マネジメントされているアスリートの事例もありますか。

「2022年のカタールW杯直前に公開されたBeats by Dr. Dreのグローバルキャンペーン『Defy The Noise』に堂安選手が出演していますが、モーメントやタイミングがハマった事例として面白いです。

 日本代表の堂安選手のほか、イングランド代表のブカヨ・サカ選手、フランス代表のキングスレイ・コマン選手、ドイツ代表のセルジュ・ニャブリ選手が登場し、雑音を遮って大舞台に挑むというコンセプトのクリエイティブです。

 カタールW杯出場国のエースをドンピシャのタイミングで同時起用し、話題を呼びました」

――広告代理店、キャスティング会社、制作会社の領域ではカバーできない部分をサポートし、クライアントに最適なスポーツマーケティングを行なうのはなかなか斬新ですね。

「競技やアスリートを因数分解して強みを見つけること、日本だけでなく海外も含めたさまざまなアクティベーション事例を把握していること、多くのアスリート・競技とのネットワークを持っていることが私たちの特徴だと思います。でも、最大の強みは、現役アスリートのマネジメントとして、選手が奮闘する姿を一番近くで見ていることなのです。

 もうひとつ、ぜひ紹介したいのが2015年に公開されたレッドブルの映像『Lindsey Vonn : The Climb』。これはアルペンスキーのリンゼイ・ボン選手が大ケガを負ってから復帰するまでを追ったドキュメンタリー映像です。

 ケガをしたら契約を切ることを考えるのではなく、ケガも競技人生のなかのひとつのストーリーとしてとらえ、アスリートをサポートする。レッドブルのその姿勢に、リンゼイ・ボン選手のファンだけでなく、スポーツ好きならきっと好感を抱くはずです」

――スポーツへの深い愛が感じられますね。

「日本代表に選ばれなかったら、ゴールを決められなかったら、メダルを取れなかったら、オリンピックに出られなかったら、スポンサー契約はそこでおしまいかもしれない......。そういう過酷な世界でアスリートは生きています。

 でも、スポーツの価値って勝ち負けがすべてではないと思うのです。人生をかけて競技に打ち込むアスリートの姿は本当に魅力的です。スポーツ・アスリートに携わる身として、それぞれの競技・大会・選手・ファンにどのような価値があるのかを因数分解し、スポーツマーケティングとして有効活用させるのが"使命"だと思っています。

 アスリートを心の底からリスペクトしているからこそ、イレブン・プラスという組織を作りました。本当の意味でのスポーツのパワー、アスリートの魅力を感じてもらうことができれば、私は幸せです」

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