堂安律、野中生萌らのマネジメントが仕掛けるマーケティング革命「スポーツの価値は勝ち負けがすべてではない」 (2ページ目)

  • Text by Sportiva

――どのような点に疑問を持ちましたか。

「そもそも、広告代理店やイベント主催者などは、基本的にスポンサーの"枠"を売るのが主な仕事です。放映権の販売、VIP席の確保などもありますが、「ここにロゴが掲出されます」「この文言や肖像を使えます」といった権利の販売がスポーツマーケティングの大部分を占めているのが現状です。

 そして、企業は買った"枠"に、看板や映像などをはめこむ作業をします。

 冠パートナー、ゴールドパートナー、シルバーパートナー、ブロンズパートナーなど、いくつかのクラスに分けられることが多く、たとえば大会名に企業名を入れられたり、ハーフタイムに映像を流せたり、子供たちが出場選手と握手できたり、クラスごとにパッケージされたプランを企業は買うことになります。

 スポーツへのスポンサーシップとしてよくあるカタチですが、これがスタンダードになっている現状に対して、私は強い危機感を覚えています」

――危機感ですか。

「危機感しかないです。端的に言えば、スポーツの魅力・付加価値をフルで生かしきれているとは到底思えない。このやり方で企業がこれからもスポーツに投資し続けてくれて、さらに大きなお金がスポーツ界に流れてくるのであれば、このままでもいいかもしれません。

 でも、企業のマーケティング担当者の中には「支払っている金額に対するリターンが期待を超えてこない」「他メディアより広告効果を評価するのが難しい」と感じる人が徐々に増えているはずです。

 企業は消費者やファンにリーチするため、会場内で映像を流したり、看板を置いたりしますが、それだけではコストパフォーマンスは決してよくありません。効果的なリーチという点では、WEBでCMを打つほうがはるかに意味があるのかもしれません。

 このままでは広告枠を売るだけのスポンサーシップは成立しなくなりますし、それはつまり、スポーツに流れる資金がどんどん減ってしまうことにつながります。

 日常的にスポーツに携わっている身として、由々しき事態です。結果だけではなく、すべてのプロセスに魅力が詰まっているのがスポーツのすばらしさなのに、現状はそのことがあまり伝わっていないのがもどかしい。だからこそ、今回、スポーツマーケティングの分野で企業のサポートをするために、株式会社イレブン・プラスを立ち上げました」

――イレブン・プラスは、従来の日本のスポーツマーケティングとは一線を画すものになるのでしょうか。

「勝つか負けるか、ゴールを決めるか決めないか、何も確約されていないからこそ、スポーツは面白いのです。言い換えれば、結果だけではなく、すべてのプロセス、すべてのモーメントに魅力が詰まっています。

 ただ単に広告枠を購入して、はめるだけの単発の投資で終わらず、持続的にスポーツ・アスリートとかかわり続けなければ、スポーツの真の魅力は引き出せません。

 とはいえ、企業が日々コンスタントにアスリートとかかわり続けるのは難しいですし、間に立ってやりとりする代理店も権利の活用、アクティベーションの部分に関しては積極的には動かないと思います。

 そこで、企業や代理店にヒアリングし、企画・アクティベーションアイデアを練り上げ、チームやアスリートとコミュニケーションし、その企画・アクティベーションアイデアを遂行するのがイレブン・プラスです」

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