「鎌田大地を巡るすべてが残留の方向を示している」ラツィオ番記者が現地から最新レポート (2ページ目)

  • フランチェスコ・ピエトレッラ●文 text by Francesco Pietrella(『ガゼッタ・デロ・スポルト』)
  • 利根川晶子●訳 translation by Tonegawa Akiko

【トゥドールの何が鎌田を変えたのか】

 そしてトゥドールの就任は鎌田の未来を大きく変えた。シーズン末に出ていくことが濃厚と言われていたが、今は限りなくラツィオ残留に近いと言っていいだろう。鎌田を取り巻く状況はサッリの時代と180度異なる。4月末のオリンピコでの第34節ヴェローナ戦の後、クラウディオ・ロティート会長は、この試合の鎌田はラツィオに来て以来最高だったと絶賛した。

「トゥドールは鎌田をラツィオの未来の軸にしようとしている。あとは鎌田の決断次第だ」

 この会長の発言も鎌田の残留を後押しするだろう。ただし、ラツィオは3年の契約更新を希望しているが、鎌田自身は1年を希望していると伝えられている。またも「とにかくトゥドールとうまくいくかどうかを見てから決める」ということなのだろう。

 今季の鎌田の成績は、第35節終了時点でリーグ戦に26試合出場し、1ゴール、2アシスト。しかし監督が代わってからはほとんどの試合で主力としてプレーしている。勝利したユベントス戦、ローマとのダービーでもスタメン入りし、その後もサレルニターナ、ジェノア、ヴェローナ、モンツァ戦に先発。6試合のうち4試合はフル出場だ。そして彼の『ガゼッタ・デロ・スポルト』紙の評価の平均も、トゥドールに代わってからは6を下回ることはない。それどころか、最近の3試合だけでいえば常に6.5以上、ヴェローナ戦は7だった。つまり鎌田は甦ったというわけだ。

 もし鎌田がラツィオに残るとしたら――すべての状況は残留の方向を示しているが??その功績はすべてトゥドールのものだ。彼は選手たちの心の琴線に触れることができる数少ない監督だ。

 選手とトゥドールの関係を物語るのにこんなエピソードがある。ユベントス戦の前、ウォーミングアップするアルゼンチン人ストライカー、バレンティン・カステジャーノスをこう言って鼓舞した。

「大変だな、君が対峙するのは世界最高のDFのひとり、ブレメルだ。でもそんな彼にアタッカーとして挑めるなんて、私だったら、うれしくて身震いしてしまうね」

 トゥドールのこんなコミュニケーションのとり方が鎌田を変身させた。ラツィオの練習場「フォルメッロ」では、トゥドールが鎌田に話しかけている姿がよく見かけられる。時には叱咤し、時には指示を細かく説明している。信頼関係は最高潮に達していると言っていいだろう。

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