レアル・マドリード恐るべし!CL準決勝でまたまた見せたしぶとさ 原動力はヴィニシウス (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【欧州一のプレーを見せたヴィニシウス】

 対峙するバイエルンの右SBヨシュア・キミッヒ(ドイツ代表)に対し、後半1分、4分、7分と立て続け1対1を仕掛けたヴィニシウスは、キミッヒを子ども扱いするように、すべて完勝を収めたのだ。

 後半10分、ヴィニシウスが対峙した相手はセンターバック(CB)のマタイス・デ・リフト(オランダ代表)だった。キミッヒが今日的なSBらしく、マイボールに転じた際に中盤に上がったその背後を突いたシーンだった。CBがサイドにおびき出されれば、中央のマークは手薄になる。ヴィニシウスが大型CBを前にしても苦もなく折り返しを決めると、ゴール前でロドリゴがシュートに及んだ。ボールはポストをかすめるように逸れたが、ヴィニシウスの活躍により、バイエルンが築く防波堤は決壊寸前に見えた。

 バイエルンの左ウイングに入ったデイビスもその間に、ドリブル突破から1本、レアル・マドリードのGKアンドリー・ルニン(ウクライナ代表)を慌てさせるシュートを放っていた。光るプレーに見えたが、さすがにレアル・マドリードの左ウイングと比較すると霞んで見えた。

 その時、舞台はヴィニシウス劇場と化していた。イメージが重なるのはPSGのキリアン・エムバペだ。適性は瓜ふたつ。もしエムバペが来季、レアル・マドリードに移籍してきたらふたりは共存できるのか。心配になるほど似ている。しかし、タッチはヴィニシウスのほうが細やかだ。粘り気があって、いやらしくもある。エムバペが淡泊に見える。欧州ナンバーワン。そう言いたくなるプレーをヴィニシウスは披露した。

 しかし、サッカーは難解なスポーツだ。試合を動かしたのはバイエルンの左ウイングだった。後半23分、ハリー・ケイン(イングランド代表)が左へ展開。デイビスは鼻先でボールを受けると、ダイナミックなアクションから、縦に行くと見せかけ、切り返した。左利きのサイドアタッカーだ。右足シュートはないだろうと、対応したアントニオ・リュディガー(ドイツ代表)は読んだのだろう。しかしデイビスが振り抜いたのは右足で、次の瞬間、レアル・マドリードのゴールに飛び込んでいた。第2戦の先制ゴールが決まった瞬間である。

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