丹羽大輝、当時34歳 コロナ禍で下した決断「誰もが臆病になっていた時期だからこそ、僕は攻めの選択をしたかった」 (3ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text&photo by Takamura Misa

 そうして丹羽は5月、晴れてセスタオ・リーベル・クルブの一員となり、スペインでのキャリアをスタートさせる。結果的に、同シーズン(2020-2021)は昇格プレーオフを戦うのみにとどまったが、2021-2022シーズンからコンスタントに出場。2022-2023シーズンには、チームの4部リーグ優勝、3部昇格に貢献した。

 そして2023-2024シーズンからは、同じバスク州のアレナス・クルブ・デ・ゲチョに戦いの場を移している。

「セスタオでは、本当にすばらしい時間を過ごしました。移籍の大変さなんてどうってことなかったと思えるくらい、毎日ワクワクしっぱなしでした。お世話になったクラブへの一番の恩返しは、チームの目標だった3部昇格への貢献だと思っていたので、それを実現できたのもうれしかったです。

 僕がセスタオでプレーすることが決まったあとに、まったく面識のない日本企業がスポンサーに名乗り出てくれたりもして、僕のプレーを通してスペインと日本が新たなつながりを持てたのもうれしい出来事でした。ただ、自分のプロサッカー選手としての芯に据えてきた『選手として最も必要としてくれるチームでプレーすること』を基準に、最もその熱意を感じたアレナスへの移籍を決断しました」

 今年で38歳、プロキャリアも21年目を数えることもあり、近年はプレーへの評価に限らず、たとえば「若い選手に経験を伝えてほしい」「クラブを日本に知ってもらうために力を貸してほしい」といった声を掛けられることも増えた。新シーズンを迎えるにあたっても、アレナスを含む3クラブからオファーが届いたものの、あからさまにプレー以外の役割を期待されたクラブもあったと聞く。だが、信念は揺らがなかった。

「本来、プロサッカー選手のあるべき姿はチームを勝たせるために、ピッチの上で、選手としていいプレーができるかが、第一の評価であるべきだと思うんです。もちろんキャリアを積めば、必然的に備わった経験値に期待されるのもわからなくもないですが、それはあくまで付加価値でしかない。

 だから、自分がその付加価値でしか勝負できないと感じたら、引退を選びます。でも今は、まだまだピッチで戦えると思っているし、それどころかコンディションもめちゃめちゃいい。一周まわって、フレッシュにサッカーと向き合えています。自分でも怖いくらいですよ(笑)」

(つづく)◆38歳の丹羽大輝「今日もサッカーができる。その事実に、心が踊る」>>

丹羽大輝(にわ・だいき)
1986年1月16日生まれ。大阪府出身。ガンバ大阪のアカデミー育ちで、2004年にトップチーム昇格。当初はレンタル移籍を繰り返して、徳島ヴォルティス、大宮アルディージャ、アビスパ福岡でプレー。2012年にガンバへ復帰。2013シーズンからスタメンに定着し、2014シーズンにはチームの三冠達成に貢献した。翌2015年には日本代表にも招集された。その後、2017年にサンフレッチェ広島へ完全移籍し、翌2018年にはFC東京へ。そして2021年5月、スペイン4部のセスタオ・リーベル・クルブへ完全移籍。現在は、同じスペイン4部のアレナス・クルブ・デ・ゲチョでプレーしている。

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