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ネイマールにも余波 性的暴行で懲役4年半の判決が下ったダニエウ・アウベスのいま (3ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【仲間から「大統領」と呼ばれて】

 そんな彼だからこそチームメイトにも愛されていた。シャビ・エルナンデスとアンドレス・イニエスタはバルサ時代、彼を兄弟のように慕っていた。多くのスター選手たちと親交があり、ネイマールともリオネル・メッシともクリスティアーノ・ロナウドとも、ズラタン・イブラヒモビッチとでさえ友達だ。

 選手仲間は彼を、敬意と親しみを込めてプレジデンチ(大統領)と呼んでいた。サッカーのスキルはもちろん、経験豊かで、面白くて、親しみやすい。彼のことを悪く言う選手はあまりいない。喋り方や態度は尊大に見せかけているが、近くで見る彼はフレンドリーで真面目な部分もあった。だから私だけでなく、多くの元チームメイトたちにとっても、今回の事件はショックだったろう。ちなみに事件当時、彼はメキシコのUNAMに所属していたが、拘留されたその日に解雇されている。

 この事件によりダニ・アウベスはブラジル国内で痛烈に非難されており、故郷バイアにある彼の銅像にはペンキがかけられ、バイアのクラブチームでは、かつて活躍したレジェンドたちの一覧から彼の写真が外された。

 ところでダニ・アウベスの事件では、ネイマールにも非難の矛先が向けられている。昨年8月に、有罪になった場合に被害者に支払われる賠償金として15万ユーロ(約2400万円)を彼のために用立てたからだ(金額は裁判所が決めたもので、判決が確定するまで裁判所に供託される)。

 ダニ・アウベス自身が保有する資産はかなりの額になる。しかし、その大部分は不動産などですぐに現金化はできず、どうやら逃亡を恐れて銀行口座を含めて資産を凍結されたようだ。すぐに使える金がなく、親友ネイマールにSOSを出したらしい。「困っている友人の頼みにNOとは言えない」「こうした罪に陥れられている人を俺はいつも助ける」と発言したネイマールに「犯罪者を助けるのか」と非難が集まった。

 この賠償金を前払いすることの目的は、反省しているという態度をいち早く表し、裁判官の心証をよくすれば、刑を軽減が期待できるという。実際、検察当局の当初の求刑は9年だったが、判決は4年半になった。

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