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久保建英は登場で試合を一変 冨安健洋は断トツの出来栄え CLベスト16に日本人3人 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【冨安の完璧なマイナスの折り返し】

 アーセナルの冨安はこの日も、前半だけの出場に終わった。対ランス戦。しかし採点するならば7.5~8を出せる、申し分のない活躍だった。CL第5節にプレーした日本人選手の中で断トツの出来映えだった。

 出場したのは右サイドバック(SB)。前節のセビージャ戦は左SBで45分間プレーしたが、その後の国内リーグでは2試合続けて右SBでプレーした。3試合連続で右SBとして出場したこの試合の結果は6-0で、冨安が出場した前半だけで5点を奪っている。この大勝劇に誰よりも深く関わっていたのが冨安だった。

 アーセナルが先制点を奪ったのは前半13分だが、冨安はその2分前に完璧なマイナスの折り返しを送っている。カイ・ハバーツ(ドイツ代表)のシュートは左ポストを20センチ逸れたが、これが決まっていればアシストは冨安だった。

 それがなぜ問題なのかと言えば、ガブリエル・マルティネッリ(ブラジル代表)が決めた4点目も、マルティン・ウーデゴール(ノルウェー代表)が決めた5点目もラストパスは冨安だったからだ。ハバーツが決めていればアシストでハットトリックを演じたことになるのだ。トップ下ならわかるが、SBで3アシストは珍しい。ガブリエル・ジェズス(ブラジル代表)が決めた2点目も、冨安の縦パスの2つ先で生まれた得点だった。アイスホッケーで言うならダブルアシスト(アイスホッケーでは、ゴールを決めた選手の前にパックに触った選手ふたりまでに1ポイントずつアシストポイントが記録される)がついていたプレーである。

 それでも冨安は前半45分で退いた。ケガをしがちな冨安の体調を考慮した結果なのか。事情を知らないファンはさぞ不思議に思ったはずだ。

 試合は前半で決まっていたので、マンオブザマッチにさえ選びたくなる。日本代表でも冨安が、ほぼ守り専門のCBではなく左右のSBでプレーする姿が見たいとは率直な感想だ。サッカーはSBで決まるという格言を想起させる、冨安の45分間のプレーだった。

久保建英や鎌田大地、三笘薫など日本人選手の活躍にも期待!
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著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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