久保建英、セルヒオ・ラモスに引導を渡す 現地紙はチームプレーヤーとして軒並み高評価
試合終盤、時代の転換期を象徴する光景があった。
久保建英(22歳、レアル・ソシエダ)は、セルヒオ・ラモスによって味方のパスをカットされるも、それを即時奪回し、相手ひとりを外して際どいシュートを放っている。その5分後、久保は自陣奥深くでタッチラインからボールを出さずに残し、味方の連係からカウンターに入ったところ、入れ替わられかけたセルヒオ・ラモスにファウルを受け、イエローカードを誘発した。さらにその1分後、セルヒオ・ラモスのビルドアップでのパスを誘い、コースを読んで奪い返すと、カウンターで置き去りにした。左足で打ったシュートは最後、わずかにパワーが足りなかったが......。
37歳になるセルヒオ・ラモスは、現役センターバックとして比類のない経歴を誇る。レアル・マドリード時代には5度のラ・リーガ優勝、4度のチャンピオンズリーグ優勝、4度のクラブワールドカップ優勝を経験し、UEFAの年間ベストイレブンを9度も受賞している。スペイン代表としても、EURO2008、EURO2012で欧州制覇に貢献し、2010年南アフリカW杯では世界王者に輝いた。
ダイナミックでエネルギッシュな攻守は革命的だった。パワー、気合、老練さで相手を凌駕。マーキングだけでなく、カバーの集中力も優れ、ビルドアップでは強気にボールをつけることができた。何より、絶対的な勝者だった
久保がそのセルヒオ・ラモスを手玉に取っていた――。
セビージャ戦でセルヒオ・ラモスとマッチアップする久保建英(レアル・ソシエダ)photo by Nakashima Daisukeこの記事に関連する写真を見る 11月26日、レアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)は本拠地レアレ・アレーナで不調に喘ぐセビージャを迎え撃ち、2-1と勝利を収めている。
3分、アンデル・バレネチェアがFKから空いていたニアサイドを目ざとく狙い、必死にカバーしたGKが自らの足でゴールに入れるオウンゴールになった。22分にはウマル・サディクが30メートル近い位置から豪快なロングシュートを放ち、ゴールネットを揺らした。往年のジョージ・ウェアのようなアフリカンパワーだった。
シリア戦後の調整がうまくいったようで、久保は先発で出場し、質の高いプレーを見せている。
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著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。