三笘薫の精神の安定ぶりはどこからきているのか 同点弾を生んだフルタイム出場 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【精神の安定がプレーの安定を生んでいる】

 だがその直後、ブライトンはエバートンに先制を許す。すると試合展開もエバートンに傾いてく。ブライトンはいつものようにボールを保持したが、ひと言で言えば高級感に欠けた。三笘のウイングプレーがゴールへの近道であることは明白であるにもかかわらず、いい形でボールが渡らなかった。左ウイングの活躍には左SBとのコンビネーションが不可欠であることを再認識させられた。

 普通の左ウイングなら、次第に疲労でプレーのリズムを崩していく。それが顕著だと、後半の早い時間帯に、粘り強くプレーしても後半30分前後には交代を命じられるだろう。

 だが三笘の場合、満足なプレーができなくても、消えることもなければ、空回りすることはない。表情からもうかがえるように飄々と、淡々とプレーする。感情のコントロールができていると言うか、精神の浮き沈みやムラッ気というものを内包していないかのようである。

 集中力を欠いたプレーをすることがない。オーバーファイトしてカードをもらうこともない。そうした精神の安定がプレーの安定を生んでいる。90分プラスアルファ、それは確実に持続する。フルタイム出場にも納得がいく。

 それがこのエバートン戦が0-1のまま終わらなかった理由だ。三笘がフルタイム出場したことでブライトンは、勝ち点1を積み上げることができた。

 同点弾が生まれたのは敗色濃厚に見えた後半39分。右サイドでボールを展開していたパスワークが、マフムド・ダフード(元ドイツ代表)の左足を経由して、左で張って構える三笘まで大きく展開された。

 三笘にはエバートンの左サイドハーフ、ジャック・ハリソン(元イングランドU-21代表)がしっかりついていた。局面は1対1。三笘にとって結果を出すにはハードルの低い設定だった。この試合、三笘が対峙するマーカーと1対1になる機会が少なく、免疫が相手についていなかったことも輪をかけた。

 三笘はハリソンに対し、内を突くと見せかける動きをした。ハリソンには、それがフェイントには見えなかったのだろう。まんまとその罠に掛かってしまう。瞬間、ステップの踏み方を間違え、体勢を悪くした。

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