三笘薫が見せたS級プレー ブライトンは経験不足を克服して欧州戦線に踏みとどまれるか (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by REX/AFLO

【後半になって訪れた見せ場】

 三笘薫のベンチスタートを予想する地元メディアは多かった。5日前に行なわれたアストンビラ戦にフル出場したことに加え、この後、中2日でリバプール戦を控えているからだ。7日で3試合はさすがにキツい。

 さらに言えば、それが終わると代表戦ウィークで、三笘は日本に帰国して2試合(カナダ戦、チュニジア戦)を戦う。それが終わると、今度はマンチェスター・シティ戦が待ち受ける。マルセイユ戦は本来、三笘を休ませるべき試合だった。だが三笘の名前はスタメンにしっかり存在した。挙げ句、90分間プレーすることになった。ブライトンの弱みは三笘の出場時間の長さに見て取ることができる。

 マルセイユに2-0とリードされた前半は、三笘のプレーも鳴かず飛ばず、だった。まともにプレーする機会がなかった。パスが回ってこなかったのだ。ブライトンは身動きが取れない状態にあった。そのパスサッカーはマルセイユの陣形にスッポリと嵌まっていた。

 三笘にとっては、もはや相棒的な存在となっているペルビス・エストゥピニャン(エクアドル代表)の故障欠場が痛かった。この日、左SBでプレーしたのは本来右サイドが主戦場のタリク・ランプティ(ガーナ代表)で、コンビとしての魅力が発揮されるまで54分間も費やすことになった。

 後半9分。そのランプティがスローインから左のタッチライン際をスルスルと突破。ゴールライン際まで到達したところで三笘に戻すように短いパスを出した。すると三笘は、今度は俺の番だとばかり再び縦方向に突破。敵陣の最深部に進出し折り返した。ゴール正面で構えたパスカル・グロス(ドイツ代表は)は、このマイナスボールをインサイドでプッシュするだけだった。ブライトンが1点差に迫った瞬間である。

 三笘の見せ場は後半28分にも訪れた。

 自軍ゴール前でボールをカットしたブライトンは、相手のプレスをかいくぐるように低い位置でショートパスをつなぐ。前方に視野が開けたのはグロスにボールが渡ったタイミングだった。得点をマークして乗っていたのか、グロスは左サイドを走る三笘に勘よく縦パスを送る。

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