「サポーターの暴力」欧州の現状 イタリア人記者は「大規模な事件が減少した代わりに人種差別が激しさを増している」 (3ページ目)

  • パオロ・フォルコリン●文 text by Paolo Forcolin
  • 利根川晶子●訳 translation by Tonegawa Akiko

【激しさを増す人種差別】

 だが、残念ながらこれで完全に暴力事件がなくなったとは言えないだろう。今はあくまで平穏な時期が多少続いているだけで、火は消えたのではなく、灰の下でくすぶっているだけだ。

 暴力への解決策は、付け焼き刃ではどうにもならない。未来のサポーターを幼い頃から教育し、スポーツマンシップと対戦相手への敬意という健全な原則を教え込まなければ根本的な解決はできないだろう。それでもなお、残念ながら、あらゆる暴力をサッカーから排除するのは難しいのではないかと筆者は思っている。なぜなら、こうした教えが行き届いている日本でさえ事件が起こるからだ。結局のところスタジアムの内外を問わず、サポーターたちは自分のなかにある怒りを爆発させるための口実を探しているのだ。

 イタリアでは大規模大な暴力事件は少なくなってきた代わりに、こうした怒りのはけ口は別な形をとりつつある。肌の黒い選手を侮辱したり、激しくブーイングを浴びせたりすること、つまり「人種差別」だ。差別的チャントは、もともと存在していたが、最近ではピッチ外の移民問題もあり、激しさを増してきている。こうした行為に対してはスタジアム出禁や個人的な「D.A.SPO(接近禁止命令)」が課せられるが、今のところほとんど焼け石に水だ。これが現在のイタリアサッカーの真の文化的問題なのである。

 サポーターの暴力行為に対し、JFAは強硬手段に出たが、それが功を奏することを願ってやまない。日本はまだイタリアのような、危機的な状況にはないのだから。

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