三笘薫が見せたワンタッチごとに進路を変えるドリブル マンU撃破で快進撃続く (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by AP/AFLO

【フォームがいいので視野が広い】

 マンチェスター・ユナイテッドのエリック・テン・ハーグ監督はブライトンの真ん中を警戒したのだろう。だが、先制点は右のサイド攻撃から生まれた。中盤ダイヤモンド型4-4-2の弱みを突かれる恰好になった。

 三笘にチャンスが訪れたのは前半31分。自陣ハーフウェイ手前20メートル地点の左サイドでボールを受ける。外回りするような素振りを見せながら内を突いた。ボールタッチをする際に前傾姿勢が深くなるとスピードは増す。総距離はおよそ50メートルに及んだ。ここまでドリブルでボールを運べる選手はけっして多くない。だがそれ以上に秀逸なのはワンタッチごとに、少しずつ進路を変える方向性だ。陣形のエアポケットに的確にボールを運ぶ。ドリブルのフォームがいいので視野が広く保てているのだ。

 ドリブルする場所は外のほうがいいと言われる。なにより真ん中のほうが、奪われる恐れがあるからだ。真ん中で攻守が切り替われば、多くの選手が逆モーションになりやすい。ピンチを招く可能性が高い。だが奪われる場所がサイドなら、その様子を真ん中の選手、あるいは逆サイドの選手が見て取ることができる。危険を察知できるので、帰陣の支度を瞬間的に整える時間が生まれる。

 真ん中ドリブルのもうひとつの問題は、次のプレーを周囲の味方選手が予測することが難しいことだ。ドリブルしている選手はコントロールを乱したくないので、目線が下に向きがちだ。周囲とアイコンタクトがとりにくい。その結果、ドリブラーを周囲の選手は傍観することになる。コンビネーションが取りにくいのだ。

 だが、三笘にその癖はない。目線は高く、視野も広いので、周囲と連携しやすい。ドリブルに無理がないのだ。この真ん中を突いた前半31分のドリブルも例外ではなかった。いまにもパスが出そうな、その機会を何度となくうかがいながら、ボールタッチに及んでいた。三笘はこのシーンでは脇で構えるララーナにパスを優しく差し出すように送った。ララーナはそのボールを失うことになったが、得点の可能性を感じさせるパス交換であったのは間違いなかった。

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