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グアルディオラは四面楚歌でも折れなかった マンチェスター・シティの革命的強さの理由 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

【批判を浴びていた就任当初】

 一時期、マンチェスター・シティの「偽サイドバック」は戦術の最先端のように語られていたが、グアルディオラは少しも囚われていない。オレクサンドル・ジンチェンコ(現アーセナル)、ジョアン・カンセロ、カイル・ウォーカーのようなサイドバックを暴れまわらせるために、仕組みを動かしたにすぎなかった。彼らが移籍したり、コンディションが整わなかったりするなかで、空洞になった仕組みはポイっと捨てた。

 昨シーズンはジョン・ストーンズを偽センターバックに登用し、パスの出し入れでプレーの可能性を広げ、中盤中央を強固にした。そうしてロドリのプレーメイクや攻め上がりを促し、ベルナルド・シウバが右から自由に攻撃を司るという新しい形を作った。CL準決勝でレアル・マドリードを轟沈したのはベルナルド・シウバで、決勝でインテルを"沈めた"のはロドリのミドルだ。

 一方で、グアルディオラが信奉するサッカーは、完全無欠に見えるだけに、粗探しも受けやすい。「ストライカーとの相性は最悪」という定説もひとつだろう。かつてバルサに所属したFWズラタン・イブラヒモビッチやFWサミュエル・エトーがグアルディオラを批判的に論じたのが要因だ。

 だが昨シーズン、新入団したアーリング・ハーランドは、見事にチームにフィットした。CL、プレミアリーグの得点王となり、無双に近かった。速く強いパスが多用され、走力や膂力(りょりょく)が生かされていた。

 そもそも、グアルディオラがストライカーを嫌うはずはない。バルセロナ時代はダビド・ビジャをリオネル・メッシと共存させた。バイエルンでも、ロベルト・レバンドフスキを覚醒させている。

 グアルディオラは常に先入観と対峙し、新しい創造をしてきた。

 筆者とグアルディオラとは盟友であるヘスス・スアレスとの共著『レジェンドへの挑戦状』でも書いていることだが、プレミアリーグ挑戦も当初は四面楚歌だった。1年目は少し成績が落ち込むと、辛辣な批判を浴びた。マンチェスター・ユナイテッドのレジェンドGKからは「GKからパスをつなぐ? どうかしているよ」と真っ向から否定された。

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