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グアルディオラは四面楚歌でも折れなかった マンチェスター・シティの革命的強さの理由 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

【今やプレミアのスタンダードに】

「正直、ここまでとは思わなかった」

 グアルディオラ自身、当時のプレミアリーグに面食らっていたという。

「プレミアリーグはボールが空中を行ったり来たり、誰にもコントロールされない状態が続く。アクションとリアクションが頻繁に入れ替わり、『トランジションに真実がある』とでも言いたげで。テンポを作る意識は乏しい。こぼれ球を制するか、が常に大事だ。ボールがどこに転ぶか、というのは偶然性が強く、次のプレーが読みにくい。足元を転がすボールは次の展開を読めるのだが......」

 グアルディオラは折れなかった。自らのフィーリングを信じ、チームに「論理」を植えつけ、極力、「偶然」を排除した。

「ピッチにボールの通るべきルートを作る。そこを通すパスのスピードと精度を上げることで、相手を寄せつけない」

 彼は「たまたま」を否定し、論理を旗頭にした。そして能動的チームの仕組みを作ると、選手のキャラクター次第で戦い方を変化させ、成長を促し、チーム力を爆発させた。それが栄光をもたらし、今やプレミアリーグのスタンダードにまでなった。

 論理はプレースタイル、感情は選手にも言い換えられるだろうか。論理と感情は相反するところもあるが、論理を動かすのは感情で、感情を導くのは論理である。お互いを触媒に「革命」は生まれる。

 次なる「革命」とは――。

 昨シーズン、中盤でエンジンになって得点力まで見せていたイルカイ・ギュンドアン(現バルセロナ)が抜けた。フィル・フォーデンを組み込む算段だろうか。新たに獲得したマテオ・コバチッチはボールを持つ時間がやや長く、マンチェスター・シティのスピード感に合わないようにも映るが、あるいは新たな形を生む前兆か。常に先入観は覆される。

 7月26日にはバイエルンと対戦する。ほぼ同じ条件の強豪との一戦で、新王者の一端は見えるか。

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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