ハーランドの移籍を成功させたスゴ腕の女性も 移籍市場を牛耳ってきたサッカー界の代理人の勢力図が変貌 (4ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【トップに立った女性代理人】

 また、フェデリコ・バルベルデらをマネージメントするワッサーマン・メディアグループも同じくアメリカのエージェントだ。こうした動きはFIFAが目指していた「古だぬきの代理人たちから力を削ぐこと」を加速させるだろう。だが同時に、新ルールを厳格に運用せざるを得なくもなった。北米の大手エージェントは要求も多く、権利についてもうるさいのだ。

 こうした流れの中では前世紀の遺物のような代理人たちはどんどん力を失っていっている。どうにか頑張っているのはジョルジョ・メンデスぐらいだが、以前に比べると苦境に立たされている(先日はロナウドを失った)。そのためFIFAのルール改正を、自分たちから権利を奪うものだとして、EUの裁判所に訴え出ている者もいるほどだ。

 そんななか、頭角を現しつつあるのがブラジル国籍の女性代理人ラファエラ・ピメンタだ。彼女はサンパウロ大学の法学教授でもあり、弁護士でもある。リバウドを通じてミノ・ライオラと知り合うと、以後20年以上、彼を法律面で助けてきた。ミノ・ライオラが亡くなった後、彼の王国を受け継いだのは彼女だった。

 彼女は引き継ぎ後、すぐにハーランドのドルトムントからマンチェスター・シティへの移籍をまとめ、昨年の「グローブ・サッカーアワード」のベストディール賞を受賞している。女性代理人はこれまでも存在はしたが、サッカー界のトップに女性が君臨するのは彼女が初めてである。ライオラの死後もハーランドをはじめ、ポグバ、マタイス・デ・リフト、マルコ・ヴェラッティなど、多くの選手が彼女のもとに残っている。

 その理由のひとつはピメンタのやり方にあるのだろう。彼女は法律をよく知るスマートな新しい時代の代理人であるが、20年もライオラのやり方を見てきただけに、旧世代のやり方もよく知っている。そしてそのうちのいい部分を取り入れた。

 ライオラが選手の信頼を得て代理人界のトップに立った理由のひとつは、「超」がつくほどの面倒見の良さだった。自分の選手が移籍をした場合、彼は新天地での選手の家探しから車の購入、銀行の口座開設、果ては子供の学校の編入手続きまで、すべてを請け負った。選手がプレーに専念できる環境づくりを全力でサポートしたのだ。

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