「鎌田大地のミラン移籍」はどうなっているのか カオスに陥ったチームの内情を番記者が明かす (2ページ目)

  • マルコ・パソット●文 text by Marco Pasotto
  • 利根川晶子●訳 translation by Tonegawa Akiko

【指揮官ピオリが鎌田を評価する理由】

 こうした内部の目まぐるしい変化の中で、ミランのあるプロジェクトは加速し、あるプロジェクトは減速した。鎌田のミラン移籍は、残念ながらこの減速した部類に入る。不本意ながらも、彼の名前は「スタンバイ」のリストに載ってしまった。鎌田はミランの新シーズンに向けての獲得1号になるなどとも言われていたが、どうやらタイミングが悪かったようだ。

 だが、ミランのリストから消えてしまったわけではない。このことははっきりしている。鎌田とミランの間ではすでに合意が成立している。鎌田はミランを移籍先に選び、ミランは鎌田獲得を決めた。

 ミランが鎌田を獲得しようと考えたのは、彼がさまざまなポジションでプレーできることが大きい。指揮官ステファノ・ピオリが彼を大きく評価する資質のひとつでもある。

 鎌田はフランクフルトでは中盤やトレクァルティスタとしてプレーしているし、ラファエル・レオンの代わりとして左サイドハーフとしてもプレーできる。そのためミランの4-2-3-1にも適合する。

 ただ、トナーリがいなくなった後釜に、ミランは運動量豊富なMFダビデ・フラッテーシ(サッスゥオーロ)を入れたいと考えている。彼はセンターハーフではなくサイドの選手だ。そうするとピオリはシステムを4-3-3の方向に舵を切るかもしれない。ただそうなった場合も鎌田に問題はない。こうした柔軟性は彼の最大の武器だ。

 鎌田のもうひとつの魅力は、はっきり言ってしまうと移籍金だ。才能と経験があるのに金額はゼロ。もちろん年俸を払う必要はあり、ミランは300万ユーロ(約4億6000万円)の4年契約を提示しているが、現所属のフランクフルトとの間には何の金額も発生しない。

 これは他のチームにとっても大きな魅力であり、アトレティコ・マドリードやボルシア・ドルトムントも彼を狙っていたが、鎌田の目にはミランのプロジェクトが一番魅力的に映ったようだ。もしかしたらパオロ・マルディーニという存在が大きかったかもしれない。ただし、すでにもう彼はいないのだが......。

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