久保建英はなぜソシエダで輝けたのか チーム年間最優秀選手にも選ばれ「タケはラ・レアルの男になった」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 6月4日、レアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)は本拠地でセビージャと対戦し、2-1と勝利を収め、有終の美を飾っている。それぞれ来季のチャンピオンズリーグ出場権を確保(ラ・レアルはリーグ戦4位、セビージャはヨーロッパリーグ王者)していただけに、勝負にこだわる一戦ではなかったが、強豪同士だけに見応えはあった。最終節にふさわしい内容の試合だったと言えよう。

 惜別の一戦としても美しかった。

 ラ・レアルのキャプテンのひとりだったMFアシエル・イジャラメンディが、この試合を最後に退団。若いキャプテンであるFWミケル・オヤルサバルに腕章を渡してピッチを出た。背番号4はさらに若いMFマルティン・スビメンディへ引き継がせる。全員がスビエタ(下部組織)出身者だ。

「アシエル(イジャラメンディ)はすばらしい選手で、失うのはつらい。しかし、観客が雰囲気を作り出してくれて感謝している。とてもエモーショナルな別れになった。昨日、彼はスビエタ(育成年代からすべての練習場がある場所を指す名称でもある)を最後に出たという」

 イマノル・アルグアシル監督は、イジャラメンディとの別れを惜しんでいる。アルグアシルもスビエタ出身者で、ラ・レアルでプレーした後、スビエタで長く育成年代を指導し、ラ・レアルのトップを率いるようになった。スビエタを中心にしたラ・レアルの強固な絆が、万雷の拍手が降り注ぐ一瞬の光景に現れていた。

 この日、22歳の誕生日を迎えた久保建英は、このすばらしい輪の中に迎え入れられたことで、才能を最大限に輝かせたのである。

最終節セビージャ戦に先発、勝利に貢献した久保建英(レアル・ソシエダ)最終節セビージャ戦に先発、勝利に貢献した久保建英(レアル・ソシエダ)この記事に関連する写真を見る セビージャ戦も、久保は別格だった。

 序盤から明らかに警戒され、削られる場面もあったが、その激しさにつき合わない。左サイドから右足でシンプルにクロスを送り、CKのこぼれ球をエリア外から左足ミドルで狙う。相手をいなすようにしながら右サイドで起点となって、同じ左利きのブライス・メンデスとの連係を高めた。メンデスの動きが鋭く、得点の予感を漂わせていたのを察知していたのか。

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