鎌田大地がピッチの上で泣き崩れた夜「僕のサッカー人生で初めて報われた瞬間」フランクフルトの5年間で初めて見た素顔

  • 了戒美子●取材・文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by AFLO

 ドイツカップ2022-23決勝、フランクフルトはライプツィヒに敗れ、5シーズンぶりの優勝は叶わなかった。交代を含めた選手層の厚さ、3バックの隙をつく的確なカウンター、システム変更への対応力、FWクリストファー・エンクンクやFWティモ・ヴェルナー、MFダニ・オルモといった個性......と、フランクフルトがライプツィヒに敵わなかった点を挙げればキリはない。

 だが、失点した71分までは互角の戦いを見せており、フランクフルトが先に得点していれば流れは掴んでいたかもしれない。GKケヴィン・トラップは「失点するまでは互角の試合だった。両チームに大きなチャンスはなかった。だが、失点後に相手が主導権を握ったことは認めなければならない」と試合の流れを振り返った。

鎌田大地はフランクフルトからどこへ移籍するのか鎌田大地はフランクフルトからどこへ移籍するのかこの記事に関連する写真を見る オリヴァー・グラスナー監督も「最初のゴールまではよく頑張った。先制点を決めたチームが勝利するという試合だった」と同じ見方だった。なにより最初の失点の際、普段は失点直後でも強く味方を鼓舞する長谷部誠がひざから崩れ落ち、落胆をあらわにした。長谷部のその珍しいリアクションは、それまで必死に耐えていたことの現れに見えた。

 今季かぎりでの退団を発表している鎌田大地にとっては、フランクフルトでの本当のラストマッチだった。試合前のセレモニーで、両チームのロゴと中心選手を配した巨大なフラッグがピッチに登場した。フランクフルトのフラッグにプリントされていたのは、マリオ・ゲッツェ、ランダル・コロ・ムアニ、鎌田大地の3人だった。

 昨夏加入でフランクフルトにとってはビッグネームながらおごりなく戦ってくれたリーダー格のゲッツェ、同じタイミングの加入でリーグ15得点・ドイツカップ6得点とエースの役割をこなしたコロ・ムアニ。そのふたりと、鎌田は並んで描かれていた。

 鎌田はカタールW杯を境に得点に関わる回数が減り、調子を落とした時期もあった。だが、それでもフランクフルトで自身最多となるリーグ9得点6アシスト、ドイツカップ4得点と、文句のない中心選手として活躍した。

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