三笘薫がチェルシー戦で披露した「大回転」ドリブル ブライトンは欧州最高のサッカーを見せている (3ページ目)
【めったにない好試合】
それはともかく、話を先に進めれば、ブライトンはここから2ゴールを奪い、1-2でアウェー戦を痛快な逆転劇でものにした。繰り返すが、すべてのサッカーファンを虜にするような滅茶苦茶面白いサッカーで。
三笘は先制されたチームを勇気づける役を果たした。前半15分、26分、29分と、失点後も自慢のドリブルでスタンフォードブリッジを震撼させた。
なかでも特筆に値するのは前半26分のプレーだった。中盤でエクアドル代表のモイセス・カイセドがパスカット、マクアリスター経由で三笘の足もとにボールが収まった。ドリブルで目の前の敵を次々にかわすプレーを「スラローム(回転)」と言うが、この場合は「ジャイアントスラローム(大回転)」に近かった。よりスピーディーで、ダイナミックさも兼ね備えていた。
ライン際から内へ切り込むと、追いすがる敵を1人、2人と振り払い、待ち構える前方の敵も1人、2人と簡単に抜き去った。こんなドリブルができる選手は世界広しと言えど、そういない。次の瞬間、右足から繰り出された低弾道のインステップも100点満点の出来映えだった。完璧なシュートだったが、相手GKケパ・アリサバラガも完璧な美技でこれを防いだ。
同点弾が生まれたのは前半42分、元イングランド代表ダニー・ウェルベックのヘディングで、逆転弾は後半24分、19歳のパラグアイ代表、フリオ・エンシソが放った、胸のすくような長距離砲だった。
残り時間は21分+ロスタイム。ブライトンは攻め続けた。チェルシーにも決定機が訪れたが、怯まなかった。シーズンを通してもそう見ることができない好試合だった。ブライトン絡みの試合に外れなし。三笘の活躍とブライトンのサッカーは、見る者にとって一挙両得の関係にある。それぞれ好ムードは健在だ。残り9試合、見逃すわけにはいかない。CL出場の可能性もゼロではないのだ。
著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。
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