「もはや無敵」なのは誰か ハーランド、オシムヘン、古橋亨梧... ゴールを量産する秘密を風間八宏が解説

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Getty Images

風間八宏のサッカー深堀りSTYLE

独自の技術論で、サッカー界に大きな影響を与えている風間八宏氏が、今回は欧州のサッカーシーンで今季活躍しているストライカーたちを分析。現段階で20ゴール以上を挙げているアーリング・ハーランド、ヴィクター・オシムヘン、古橋亨梧の3人の「ゴール量産の理由」を解説してもらった。

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欧州サッカーでゴールを量産しているハーランド(左)、オシムヘン(中)、古橋亨梧(右)欧州サッカーでゴールを量産しているハーランド(左)、オシムヘン(中)、古橋亨梧(右)この記事に関連する写真を見る

【ハーランドは狭い場所でも決める技術を身につけた】

 ストライカーと呼ばれる選手は数多いが、ヨーロッパの主だったリーグ戦でシーズン20ゴール以上をマークする選手は限られている。とりわけ対戦相手の分析レベルが向上している現代サッカーにおいて、ストライカーがゴールを量産することは以前よりも難しくなっているのが実情だ。

 そこで今回は、今シーズンのヨーロッパサッカーにおいて、突出してゴールを量産している3人のストライカーをピックアップ。独自の視点を持つ風間八宏氏に、彼らが持つ"ゴールを決める技術"について詳しく解説してもらった。

 ひとり目は、今シーズンからマンチェスター・シティで活躍するノルウェー代表の怪物ストライカー、アーリング・ハーランド。すでにプレミアリーグで28ゴールを量産して得点ランキングトップを独走する他、チャンピオンズリーグ(CL)でも10ゴールをマークするなど、目下ヨーロッパ・ゴールデンシュー(最多得点者)の最有力候補でもある(4月5日時点)。

 昨シーズンまでプレーしていたドルトムント時代から、すでにヨーロッパを代表するストライカーとして知られていたハーランドだが、マンチェスター・シティに移籍した今シーズンは、どのような進化を見せているのか。

 風間氏は、マンチェスター・シティ移籍後の"ある変化"について説明してくれた。

「ドルトムント時代と比べていちばん変わったのは、ゴール前の細かい動きです。シティはドルトムントよりも相手陣内に押し込んでサッカーをするチームなので、それに適応する必要があったからでしょう。

 特に最近のゴールを見るとその特徴がよく出ていて、ゴール前にポジションをとっている時、ボールの方向が変わった瞬間に体の向きを変え、自分がゴールを決めるために細かく動き直しています。しかも、ただ動き直すのではなく、その動きが速い。動きすぎるとボールは自分のところに出てこないものなので、いつ、どの程度細かく動くか、という点が重要になりますが、ハーランドはそれが速く正確にできています。

 シティでプレーする場合は、ドルトムント時代のようにサイドに流れてプレーしてしまうとチーム(のかたち)が壊れてしまうので、前後左右から入って来るボールをゴール前で合わせるケースが増えてきます。そうなると、狭いペナルティーエリアの中で自分がシュートを狙える体勢を何度も作って、的確なポジショニングをとり続ける必要があります。

 これは現在バルセロナでプレーするロベルト・レバンドフスキが得意とする技術ですが、現在のハーランドは、それと同じことができるようになりました。以前から前方にスペースがある時の強さには定評がありましたが、こういったゴール前の狭い場所でもゴールを決める技術を身につけたとなると、もはや無敵と言っていいでしょう。

 これまでジョゼップ・グアルディオラ監督のサッカーではズラタン・イブラヒモビッチのような大型ストライカーは適応が難しく、どうしてもゼロトップ的になってしまいましたが、ハーランドがゴール前でゴールを奪うための細かい動きを覚えたことで、ついにチームのラストピースになった印象です」

 風間氏が指摘するとおり、たとえば7-0で勝利したライプツィヒとのCLラウンド16第2戦でハーランドが決めた5ゴールは、1点目のPKを除けば、バーの跳ね返りやこぼれ球など、ゴール前の動き直しによって決めたゴールがほとんど。それだけを見ても、まさに無敵のストライカーに進化したことがよくわかる。

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