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久保建英が「ティキ・タケ」と称賛される理由。2戦連続MOM、レアル・ソシエダのサッカーを象徴する存在になった

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 中島大介●写真 photo by Nakashima Daisuke

「ティキ・タケの勝利」

 スペイン大手スポーツ紙『マルカ』は、そんな見出しでレアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)がエスパニョールをアウェーで2-3と下した一戦を報じている。「ティキ・タケ」は、「ティキ・タカ」と久保建英の「タケ」をもじった表現である。

「ティキ・タカ」は大まかに言えば、パスを軽快につなぐリズムを表している。「時計がチクタクと鳴る秒針のリズム」とか、「アメリカンクラッカーの響き」とか、「実況アナウンサーがパス回しを擬音で表現した」とか、由来は諸説ある。2007年前後から、スペイン代表やFCバルセロナのパスサッカーを形容する表現として定着するようになった。

 久保がラ・レアルを象徴するようなボールプレーを見せていたということだろう。彼がボールを触るたび、リズムが生まれた。それがゴールにつながった。この見出しは、久保がラ・レアルのサッカーを象徴するような存在になったことを示しているのだ――。

 2月13日のエスパニョール戦で、久保は前半22分にラ・レアルの先制点を美しいボレーで決めている。

エスパニョール戦で2試合連続マン・オブ・ザ・マッチに輝く活躍を見せた久保建英(レアル・ソシエダ)エスパニョール戦で2試合連続マン・オブ・ザ・マッチに輝く活躍を見せた久保建英(レアル・ソシエダ)この記事に関連する写真を見る バックラインからのサイドチェンジを受けたミケル・オヤルサバルが左で起点になって、抜群のタイミングで追い越したアシエル・イジャラメンディにパス。左足で入れたクロスは、ニアでアレクサンダー・セルロートに合わなかった。しかし、久保がこぼれ球をエリア角で拾い、ワントラップから体を倒し、高さを抑えてニアに突き刺した。

 ラ・レアルはボールプレーで相手を上回り、ゴールを決めたと言える。常にそれぞれの選手が正しいポジションをとっているため、攻撃ではそこら中で人が湧きだすように攻めかけることができる。久保がボールを拾えたのは偶然ではない。ひとつのオートマチズムで、再現性の高いプレーだった。

 先制点の場面で久保はシューターに回っていたが、その約15分後にはチャンスメーカーに回っている。

 久保は、自陣で味方の守備からこぼれたボールを回収。二度の鮮やかなワンツーでゴール前までテンポよく運ぶと、左のオヤルサバルへパスしている。その切り返しが長くなって、セルロートがシュートを狙う場面があった。どのパスもハイスピードの中で精度が保たれ、心地よいリズムがあり、敵には悪魔の律動だったはずだ。

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著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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