久保建英、レアル戦で「真のチャンスメーカー」として高評価。エース不在でも戦えるチームに革新させている (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

【「ボールを触るたびに攻撃が好転」】

 その後も、久保はラインの間でボールを受け、ゲームメイクにも参加し、苛ついたセンターバックのエデル・ミリトンから、うしろからのファウルを浴びている。戦力的には不利なチームに、要所で猶予を与えていた。後半6分にはプレスバックしナチョからボールを奪い取ると、そのままカウンターに入って、アレクサンダー・セルロートに決定的なスルーパスを送った。

 そして後半、まだ試合勘を取り戻せていないミケル・オヤルサバルと、この日は低調だったブライス・メンデスに代わって、パブロ・マリン、ロベルト・ナバーロという若手が入って4-2-3-1に布陣を変更すると、久保が右サイドでチームを牽引した。

 後半15分、P・マリンとのワンツーから右サイドを抜け出し、慌てて追いついたドイツ代表アントニオ・リュディガーをあざ笑う股抜きの一撃を放つが、これは名手クルトワに阻まれる。後半22分には、R・ナバーロが奪い返したショートカウンターでは、久保はリュディガーの背後、エドゥアルド・カマヴィンガの前をとって、パスを呼び込む。これも最後のタッチが大きく、ティボー・クルトワと交錯してチャンスを逃した。

 久保は攻守の中心だった。

 最後の10分、チームはレアル・マドリードの圧力を受け、苦しい時間帯だったが、そこでも真価を見せている。クルトワへのプレスでマイボールにし、自陣に戻って相手の攻撃にふたをし、終盤にはパスカットからカウンターにも入って、勝機を探しながら時間を稼いで、引き分けに貢献した。

「久保はふてぶてしく、鮮やかさで、知的だった。すばらしいクオリティーの持ち主であることをベルナベウで示した。レアル・ソシエダの真のチャンスメーカーで、スーパーゲームをやってのけたと言える。ふたつの決定機をつかんだが、彼がボールを触るたび、攻撃は好転。あまつさえ、守備のタスクもしっかりこなしていた」

 スペイン大手スポーツ紙『アス』の寸評は、過不足がない。ゲームMVPは、いくつもの決定機をセーブしたGKアレックス・レミーロだろうが、チーム全体を支え、スペクタクルを生み出していたのは久保だった。

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