カタールW杯の女性たち。おとなしくしていたセレブと存在感を発揮したイランサポーター
カタールW杯ではついに女性審判が登場した。女性の人権が問題視される国で、これは画期的なことだ。カタールでは女性が進学や就職、結婚、そして海外旅行に行くのでさえ、父親や夫、兄弟といった男性の保護者の同意がなければならない。基本的にはアバーヤと呼ばれるベールと体の線が見えないマントを着用し、より保守的なベドウィン(遊牧民)の女性はニカブというベールで顔を覆っている。世界経済フォーラムの男女格差ランキング2022で、カタールは146カ国中137位だ。
カタールではサポーターにパンフレットが配られているが、それは大会ガイドなどではない。カタールで「してはいけないこと」を書いた注意事項集だ。シャツを脱ぐなどして、身体の大切な部位を露出してはならない。試合を観戦する者はアルコール、麻薬、いかなる薬物の影響下にもあってはならない。人前で配偶者や恋人に親密さを見せてはいけない――。
もちろんこれらがすべて厳密にすべて守られているわけではない。たとえばお酒はファンパークやホテル、ライセンスのあるパブで思った以上に手に入るので、ビールを飲んでいい気分でスタジアムに来ているファンも多かったし、ブラジルの選手たちは試合後、妻たちに駆け寄り、キスをしていた。
ただ、正確なデータはわからないが、今大会観戦に来た女性サポーターの数は、これまでのW杯よりも明らかに少なかった。禁止事項の多い国で何かあったら嫌だと二の足を踏ませたのかもしれない。だが理由はそれだけではない。主に欧米の女性サポーターや記者の多くが、カタールの女性の人権侵害に抗議するため来なかった。ヨーロッパには女性サポーターのグループが630以上あるというが、そのどれも今回は不参加だった。
イランの国旗を手に応援する女性サポーターたち photo by JMPAこの記事に関連する写真を見る スタンドに並ぶWAGS(選手の妻や恋人)たちも、今回の服装はユニホームなど目立たないものだ。なにしろカタールに行く前には、各国の外務省から現地での振る舞いを特別にレクチャーされているのだ。肩を出してはいけない。ミニスカートは避ける。スタンドでスラングを叫んだり、下品なジェスチャーをしてはいけない。
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