ロナウド「美しかった夢も終わってしまった」。希代のゴールゲッターはこのまま終わるのか

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AP/AFLO

 12月10日、アル・トゥマーマ・スタジアム。カタールW杯準々決勝、ポルトガルはモロッコとの対戦を迎えていた。会場はアラブ、イスラム社会のつながりで、モロッコをサポートする声が圧倒的に大きかった。

 試合前、ポルトガルのエースを張ってきたクリスティアーノ・ロナウドは、4人組のリフティングに興じていた。かすかに笑顔が見える。仲間の失敗に対し、柔らかい表情で肩をすくめた。

 その日、ロナウドは先発を外されていた。10年以上にわたって、リオネル・メッシと「どちらが世界最高か?」を激しく競った英雄としては寂しい扱いだろう。周辺のニュースはネガティブなものばかりだった。大会中に所属先のマンチェスター・ユナイテッドと揉めて、契約解除。韓国戦で交代を命じられた時の不満げな様子は、フェルナンド・サントス監督の逆鱗に触れた。

 しかし、ロナウドは平然としているように見えた。控えメンバーでボール回しなんて耐えられない、というような素振りは見せなかった。あるいは、自分の中に燃え立つものがなくなったのか?

 0-1とリードされた51分だった。

 ロナウドはルベン・ネベスに代わってピッチに立っている。いきなり左サイドから抜け出し、決定的なチャンスを作った。相手のラインを押し下げ、手詰まりだった攻撃を活性化した。ポストプレーに入って、ジョアン・フェリックスの絶好機も演出している。

 しかし、ゴールするパワーはなかった。

モロッコに敗れ、ひとりピッチを去るクリスティアーノ・ロナウド(ポルトガル)モロッコに敗れ、ひとりピッチを去るクリスティアーノ・ロナウド(ポルトガル)この記事に関連する写真を見る「買い手がつかなかったのは、ロナウドのバリューが下がったから。どの国のリーグでもまだ二桁のゴールをとる力はあるし、自由を得たら20点に届くかもしれない。でもチームのタスクをこなしたらそれは厳しいし、30点をとるストライカーではなくなった」

 今年の夏、ロナウドが移籍を宣言しながら交渉がまとまらなかった時、欧州で活動する代理人はそう洩らしていた。

 昔と同じように見えても、同じではない。わずかな差でスーパースターだったのが、その差が埋まってしまった。年齢による衰えがあったと言わざるを得ない。今回のW杯も、ゴールは初戦のガーナ戦のPKによる1点だけだった。

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