メッシ「人生の大一番だった」。アルゼンチンがオランダ戦で見せた新しい顔とは?

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 アルゼンチンは初戦のサウジアラビア戦でこそ冷や水を浴びせられたものの、その後は試合を重ねるたびによくなっている。メキシコ戦、次いでポーランド戦と2-0で勝利。グループC首位に躍り出て決勝トーナメントに勝ち進むと、決勝トーナメント1回戦のオーストラリアにも苦しむことなく勝利を飾った。メッシはポーランド戦以外ではすべての試合でゴールを挙げており、また自分がゴールできない時も、敵のディフェンダーを自分にひきつけ、仲間にゴールさせている。

 アルゼンチンは今大会初のジャイアントキリングの餌食となった。しかし彼らにとって幸いだったのは、この洗礼が初戦だったことだ。その後はいい試合をしてトラウマを振りきり、決勝トーナメントにたどり着く前に本調子を取り戻すことができた。グループリーグの最終戦で敗れ、ショックの記憶がまだ生々しいたスペインやポルトガルなどとは違った。

 スタンドを埋め尽くすアルゼンチンサポーターは両手を上げ下げし、「メーッシ、メーッシ」とコールする。その姿はまるで何かの宗教でもあるかのようだ。かつてディエゴ・マラドーナを「ディエーゴ、ディエーゴ」と呼んでいたのと同じだ。

 これまでアルゼンチンでは、リオネル・メッシは常にマラドーナよりも一段下の存在に見られていた。アルゼンチンで「サッカーの神様」と言えば、他でもないマラドーナを意味するのだった。だが今大会で、もしかしたらメッシはマラドーナに並んだかもしれない。

オランダを下してベスト4に進出し、満面の笑みを浮かべるリオネル・メッシ(アルゼンチン) photo by JMPAオランダを下してベスト4に進出し、満面の笑みを浮かべるリオネル・メッシ(アルゼンチン) photo by JMPAこの記事に関連する写真を見る 実際、W杯にまつわる記録ではすでにマラドーナを抜いている。出場回数はマラドーナ4回、メッシ5回、試合数はマラドーナ21、メッシは現段階で23。ゴール数はマラドーナ8、メッシは現段階で9ゴール。最後のふたつの数字はこの後も伸びていくだろう。

 アルゼンチン代表の今大会の合言葉は「レオのために」だ。何度も世界最高の選手に選ばれながらも、W杯チャンピオンにはなったことのないメッシの最後のチャンス。選手もスタッフもサポーターも、皆このスローガンのもとに一致団結している。つまりレオ・メッシ第一主義だ。

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る