ロナウド「美しかった夢も終わってしまった」。希代のゴールゲッターはこのまま終わるのか (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AP/AFLO

【ゴールマシンであるがための限界】

 宿命のライバルであるリオネル・メッシは、肉体的衰えを最小限にできた。なぜなら彼は中盤に下がって、ゲームを作る能力にも長けるからだ。FCバルセロナで培ったオールラウンダーのプレービジョンが、今のメッシを支えている。所属するパリ・サンジェルマンでも、キリアン・エムバペ、ネイマールなどを生かしきって自らも輝いているし、アルゼンチン代表でもそれは似たようなものだ。

 一方、ロナウドはプレーメイカーというタイプではない。作るよりも、壊す。相手に打撃を与えることを信条とする選手で、いわゆる器用さはない。生かされることで生きるタイプだ。

 これまでは絶対的ゴールマシンで、周りがせっせと働いてくれた。本人も、期待に答えるのが使命だった。その姿にこそロナウドの真実はあったのだ。

 モロッコ戦で、実は決定機を迎えている。アディショナルタイムに入った直後、自陣からのロングスルーパスをディフェンスラインの裏へ呼び込み、瞬間に敵GKと1対1になった。あとは右足を振り抜き、ゴールネットを揺らすだけだったが、シュートは凡庸な軌道でGKに阻まれている。全盛期だったら考えられない逸機だった。

 そして、チームは0-1と完封で敗れた。

「今は語るべき言葉がない」

 モロッコ戦後、ロナウドは言葉を絞り出している。

「周りではたくさんのことが書き立てられたが、私のポルトガルへの想いは変わっていない。いつだって目標のために戦ってきたし、仲間を、国を裏切ったことなどはないよ。ポルトガルのためにW杯を掲げるのは大事な夢だった。夢は続く限り、美しかったが、それも終わってしまったんだ」

 ロナウドは失意に暮れている。彼はこのまま終わるのか。

「今は楽しむというよりは、サッカーを『使命』と捉えているんだ」

 35歳を前にしたスペイン紙『エル・パイス』のインタビューで、ロナウドはそう語っている。

「少年時代は"今日はドリブルしてやるぞ"という感じでピッチに通っていた。今はそういう楽しみ方ではない。プレッシャーのなかで生きているのは感じるし、周りの人がいつも自分のプレーをジャッジする。33、34、35歳と年を重ねて、『もうダメだろ、やめたら?』という空気を感じる。それを覆すには、憎まれることも必要だ」

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