カタールW杯ドイツ代表はいつもとここが違う。ストライカーの欠場、絶対的スターの不在など (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

「弱気な発言」に苛立つメディア

 その間に、監督はヨアヒム・レーヴからフリックへと変わった。ユルゲン・クリンスマン監督のもとでのヘッドコーチ時代を入れると、実に17年間にわたりドイツ代表を率いたレーヴの後任の役は非常に重かったであろう。

 フリック監督は就任してすぐに「ドイツをトーナメントチーム――最後まで勝ち抜くチームに戻す」と誓った。2006年から2014年まで代表のアシスタントコーチを務め、代表の空気をよく知っていたフリックは、今のチームにかつての勝者のメンタリティーがないことがすぐにわかったのだ。

 W杯は決してただサッカーが強いチームが勝つという大会ではない。短期間に集中して行なわれるだけに、心と体のコンディションを保つことが結果を大きく左右する。だが、ここにきてもまだ、ドイツの選手たちは苛立っている。9月のネイションズリーグでは、ハンガリーに敗れ、イングランドに引き分け、一度も白星を手に入れられなかった。

 イルカイ・ギュンドアンはハンガリー戦後のインタビューで「自分たちに失望した」「自らチャンスを失ってしまった」とコメントした。ドイツのジャーナリストたちも苛立っている。彼らはこうした台詞を「弱さ」ととらえるからだ。

 チーム最高のストライカー、ティモ・ヴェルナーをケガで失ったと知って、フリック監督が「苦いニュースがある」「ヴェルナーが出られないのは大きな損失」と言った時も、彼らは快く思わなかった。「監督は何があっても泰然としているべきなのに、彼は弱さを見せチームに動揺を与えた。ポジティブなエネルギーを損なった」――メディアはそう非難した。

 ドイツのテレビのサッカー討論番組はいつもだいたい喧嘩で終わり、代表が招集される前も、26人に誰を選ぶのかで喧々諤々だった。

 チームのフィジカルコンディションも決してよくはない。キャプテンのマヌエル・ノイアーは肩を痛め、約1カ月リーグ戦を欠場、11月に復帰したばかりで不安が残る。ミュラーも10月に入ってからほとんどまともにプレーしていない。

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