カタールW杯ドイツ代表はいつもとここが違う。ストライカーの欠場、絶対的スターの不在など

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 ドイツ人記者によると、ドイツ代表のハンジ・フリック監督は日本戦を前に、選手たちに強い言葉で発破をかけた。

「我々はここに勝ちに来ている。我々にかかるプレッシャーは大きい。それならば、このプレッシャーをそのまま日本にかけてやろう。すぐにゴールを奪い、彼らが試合中、一度も自信を持てないようにするのだ」

 フリックは日本戦のFWに長身で強靭なニクラス・フュルクルクを起用するつもりでいたが、インフルエンザで間に合うかどうかは不明だ。今大会、ドイツがゴールを期待する中心選手だが、間に合ったとしても満足に練習のできていない状態でのプレーとなるだろう。一方、1週間前のオマーン戦で姿のなかったトーマス・ミュラーとアントニオ・リュディガーは、練習に復帰した。

 とはいえ、ドイツがドイツらしくない。ここ最近のドイツを見ていて、筆者が一番に感じるのはそれだ。

日本戦を前に調整中のドイツ代表のハンジ・フリック監督とGKマヌエル・ノイアー photo by AP/AFLO日本戦を前に調整中のドイツ代表のハンジ・フリック監督とGKマヌエル・ノイアー photo by AP/AFLOこの記事に関連する写真を見る ドイツといえばゲルマン魂だった。何があっても動じず、冷静沈着。感情に振り回されず、やるべきことをやる。だからこそドイツは常に安定してW杯でいい成績を残してきた。だが、世界中で「カタール大会の優勝候補は?」という質問が挙げられているが、元監督も選手もジャーナリストも、ドイツの名前をトップにあげていない。こんなことはこれまでになかったことだ。

 2014年ブラジルW杯で優勝を果たし、連覇を狙っていたドイツは、2018年ロシア大会ではグループステージで敗退。80年間で最も早いW杯からの脱落であり、何より屈辱的なグループ最下位という成績だった。ドイツはいまだにその闇から完全に立ち直れていない。どんな苦境にあっても克服できるという自信が、根底から崩れてしまった。

 2021年に行なわれたヨーロッパ選手権ではその空気を一掃しようとしたが、グループリーグではトップに立てず、ラウンド16で宿敵イングランドに敗れ、姿を消した。W杯予選では世界で最初にカタール行きを決めたが、それは決してドイツが復活したからではない。ドイツの入ったグループJはリヒテンシュタイン、アイスランド、アルメニア、ルーマニア、北マケドニアと、かなり恵まれていた。それに油断すると、北マケドニアにホームで敗れさえしていたのだ。

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