カタールW杯ドイツ代表はいつもとここが違う。ストライカーの欠場、絶対的スターの不在など (3ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

盛り上がりに欠けるドイツ国内

 もうひとつ、ドイツを不安にさせるのが、絶対的スターの不在だ。背番号10が誰か、即答できる人は少ないだろう。セルジュ・ニャブリ。いい選手だが、歴代の10番、ギュンター・ネッツァー、ハンジ・ミュラー、ローター・マテウス、ルーカス・ポドルスキ、メスト・エジルなどに比べると印象は薄い。

 本大会直前にはFIFAランキング75位のオマーンに勝利はしたものの、苦戦した。ドイツのある新聞は一面に「急募。ストライカー2名 ドイツ代表」という"広告"を出した。

 ドイツのモチベーションが上がらない理由がある。これはピッチの外の話だ。ドイツは世界の中でも、デンマークやオーストラリアと並んで、カタールの人権侵害を問題視している国だ。国内の多くのバーやレストランが、店ではW杯は放送しないと宣言しているし、ブンデスリーガでは大会のボイコットを望む横断幕が何度も出されている。

 代表選手自身も、いち早く予選の時に「HUMAN RIGHTS」と書かれたシャツを着て登場した。また、先日はドイツの内相がカタールを名指しで非難し、それに対して在ドイツのカタール大使が正式に抗議。国レベルでも外交問題となる一歩手前となった。

 ドイツ代表は、W杯期間中にネパールの孤児を支えるNPO団体に100万ドル(約1億4000万円)を寄付すると宣言している。W杯のインフラ整備のために亡くなった労働者のなかで、ネパール国籍の人が一番多かったという。この寄付が亡くなった労働者の遺族の助けになることを願ってのことだ。

 ドイツ代表のなかには、本来ならカタールには行きたくないと思っている選手も少なくないだろう。ファンもそうだ。今回のW杯はここ最近のなかで最もドイツ人サポーターの数が少ない大会である。ドイツ国内で売れたチケットは合計3万5000枚。ロシア大会のチケットは6万2000枚、ブラジル大会のチケットは5万8000枚が売れていた。同じく大会への反対論が強いイングランドだが、それでもずっと多くのファンがカタール入りしている。

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