「ありきたりな言葉は指導においてぜい肉でしかない」。廣山望が考える未来のサッカー日本代表の育て方 (4ページ目)
欧州の選手たちはリスクを取るハードルが低い
――日本が減点方式だからだと思うんですが、リスクを負いたくない、ミスをしたくないというのが日本人の気質だと思うんです。それに対してヨーロッパの選手はリスクを冒すことに積極的で、だからこそ結果が出せて上に行けるんでしょうか?
そうですね。リスクテイカーだと思います。でもリスクに対して、そんなに深く考えていないと思うんですよね。サッカーが好きで活躍したいとか、勝ちたいとか、そうした思いのほうが強くて、失敗したくないとは考えてもいない。失敗しても結局、次の日には元のチームに戻って活躍するだけなので、リスクを取ることに対してハードルの高さみたいなものは低いですよね。
――ミスを怖がる子どもはよくコーチの顔を伺う傾向がありますが、アンダー代表レベルの子どもにもそんな傾向はあるものですか?
さすがに今やっているU-15、U-16代表チームのキャンプで、そういう雰囲気はないですね。でももし、キャンプの初日や2日目でそうした傾向が感じられたら「もったいないよ」と働きかけます。
代表キャンプは3泊4日で終わるような、短い期間のものもあります。そこでそういうプレーをされたら、呼んだこっち側としても本当にもったいないことです。だから「前にスペースがあって上がらないのはもったいないよ」「ダメだったらそれで覚えるし、味方がカバーするチャンスになるから」と、できるだけ思いきってやれるように声がけしていきます。
できるだけチャレンジして、失敗して、修正して帰ってほしいと思います。代表キャンプとしては、本質的にミスを恐れてプレーする時間はあってはならないと思いますね。
――廣山さんは23歳でパラグアイに移籍されました。今でこそ日本の若い選手が海外へ移籍するのは当たり前な時代になってきましたが、そのなかで「海外に行くなら若ければ若いほどいい」という意見もあれば、「Jリーグでちゃんと結果を出してから行くべき」という意見を持っている方もいます。廣山さんは、若手選手が海外へ移籍するタイミングについてはどのように考えていますか?
それは本当に個人によると思います。でも大事なのは人間として成熟して、その人のなかで何があっても戻ってこられる芯があるかだと思います。それがなければ、向こうで揺さぶられた時に潰れて終わりですよね。
僕の場合はジェフである程度責任を与えられて、しっかりと5年間過ごしてパラグアイに行ったので、いいタイミングだったと思います。Jリーグで結果を出すことでそこにつながるなら、結果を出してからのほうがいいし、高校年代でもなにかしら人間的な素地ができあがっているなら、早く行くに越したことはないです。
U-15、U-16代表にも海外でプレーできる素地のある選手たちがいるので、どう殻を破って海外へ行けるだけの準備が整うように働きかけてあげるかが、大事だと思っています。それが23、24歳なのか、大卒プロ1、2年目なのか、それは選手によってさまざまですが、海外のトップレベルで15年プレーするのと、10年プレーするのでは日本サッカーの未来は変わってくる。
その意味では、選手たちが殻を破る過程をどうサポートするかという代表チームの役割は大きいと思います。
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