「ありきたりな言葉は指導においてぜい肉でしかない」。廣山望が考える未来のサッカー日本代表の育て方 (3ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by AFLO

子どもたちをサッカーに夢中にさせる

――2017年からU-15日本代表のコーチもされるようになりましたが、代表の子どもたちを指導する上で、なにか違いはあるものですか?

 一つはワールドカップという大きな目標があるのは、すごく幸せですよね。ワールドカップがどんな大会かを伝えて、身近に感じさせることで火がつけば、もう話が早いですね。

 子どもたちは学業もあったりして、サッカー以外の時間も多いわけです。そのなかでどれだけサッカーに夢中にさせてあげるか。もちろん、代表に選ばれるような子どもたちなので、夢中になっている子たちばかりです。でもそのなかでも一番夢中になれるような子が、さらに上へ繋がっていくチャンスをものにしていきます。

 そうなるためにちょっと刺激を入れることで変わっていく、その手助けをするのが代表コーチの仕事だと思います。もちろん、具体的にサッカーを教えなければいけないし、サッカーを教えるのは大好きです。

 でも短い期間しか接することはできないし、その子のベースは日常のクラブでの活動にあるわけですよね。そこで代表でどう刺激を入れて帰してあげたらいいか。15、16歳くらいだとタイミングを見て刺激を入れて、ちょっとでも変わって帰ってもらうのが大事だと思うので、スタッフ全員で力を合わせて取り組んでいます。

――アンダー代表のようにその年代のなかでトップの実力を持った選手たちを見て、今の日本の育成年代の課題などはどのように持たれていますか?

 まず課題よりも、これまで育成年代に関わってこられた方々の成果のほうが強いと思います。17歳や18歳でJリーグデビューする選手がだいぶ増えているし、U-14やU-15代表のエリートが、U-20やU-22代表に残っていく数も確実に増えています。

 その上で、課題としてはメンタリティのところですね。外国人は、いいか悪いかは別として、年齢は関係ないんですよ。それよりも個人のキャラクターのほうが大事で、偉そうにしているヤツは下でも偉そうだし、上に行っても偉そうにしているわけです。

 でも大事なのは、ピッチでチームのために汗をかけるか、チームの勝利に貢献できるか、うまくなるために必死にやれるか。そこだけにちゃんと集中しているんです。でも日本の場合、育成年代でもまず遠慮があったり、自信がなかったりするわけです。

 自信を持って、自分がどれくらいやれるかをわかってピッチに立てるかどうか。ヨーロッパの若手には、もう自信過剰くらいの選手が多い。そこは、本当の一流選手と比べると課題だと思います。自分をどれだけ信じられるかというメンタリティやサポートの仕組みは、改善する余地がある部分だと思います。

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