「ありきたりな言葉は指導においてぜい肉でしかない」。廣山望が考える未来のサッカー日本代表の育て方

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by AFLO

廣山望インタビュー 後編

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ジェフユナイテッド市原を皮切りに、パラグアイやポルトガル、フランスなどグローバルな現役時代を過ごした廣山望氏は、現在JFAアカデミー福島や、育成年代の日本代表コーチを務める。指導者の土台は引退直後に留学したスペインで作ったという廣山氏に、現在の選手指導の考え方を聞いた。

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現在育成年代の日本代表コーチなどを務める廣山望氏(左から2人目)現在育成年代の日本代表コーチなどを務める廣山望氏(左から2人目)この記事に関連する写真を見る

スペインで指導者の土台を作る

――廣山さんは現在、JFAアカデミー福島U-15コーチと、U-15日本代表監督、U-16日本代表コーチを兼任されています。指導者キャリアとしては2012年に引退した翌年にスペインのバルセロナへ1年間の指導者留学をしたあと、JFAアカデミー福島のコーチ就任がスタートになりますが、指導者はいつ頃から志していたのでしょうか?

 日本にいる間にB級ライセンスまで取得していて、そこでちょっと面白いなと思っていました。それで引退する前の最後の2年間をアメリカでプレーしたんですが、1年目がとてもよかったんです。

 日本に帰ってきて7シーズンプレーして、そこからもう一度違う世界で刺激になるような、考え方を変えられるようなところで生活し、プレーしたいと思っていました。アメリカには自分が求めていたものがあって、かなり充実していました。

 その1年目ではっきりと選手としてもう十分にやった感覚があったので、最後の1年が終わったら「もう指導者の勉強を始めないと間に合わないな」と思うようになったんですよね。

 チームメイトにはプレーを続けながら午前中に練習して、午後は自分のチームで監督やコーチをやっている選手が多かったんです。最後の1年はそういうところで練習を見学させてもらったり、教えてもらったりしながら過ごしていました。

――バロセロナ留学の1年間はどのように過ごされたんですか?

 ライセンス学校と語学学校に通いながら、週末は試合を見たりしていました。向こうは育成年代の監督でもちゃんと評価があって、「今この監督がいいよ」「この監督がずば抜けていい指導をしている」とか、かなり情報が得られるんですね。

 その情報を集めて「練習を見させてほしい」とお願いして、2、3週間くっついて、試合をして、練習して、修正してというサイクルを見させてもらいました。それでまた次のクラブへ行く感じで、トップチームから育成年代まで、リーグのカテゴリーも年代もバラバラにいろんなところを転々としていました。自由にやらせてもらえてよかったですね。

――留学で学ばれたものはたくさんあると思いますが、そのなかでもとくに印象に残っている、今でも役に立っているのはどんなことですか?

 トレーニングに対する考え方ですね。僕は日本でB級ライセンスまではやっていて、指導の経験が一切なくて、スペインで初めて実地をやらせてもらいました。そこでトレーニングに対しての考え方、選手との関わり方など、おそらく日本とはだいぶ違うものが多かったと思います。

 パラグアイで選手としての土台ができたという話と同じで、指導者としての土台をスペインで作れて、そのベースがあった上で日本に帰ってきて、改めてもう一回指導者としての勉強をするチャンスがあったのはすごく大きいですね。

 だから具体的なトレーニング内容とかではなく、歴史があり、なおかつ新しく指導法をイノベーションしてきたスペインでのベースが当たり前のものとしてスタートして、指導者としての土台が人と違うのは武器ではあると思います。

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