スペイン代表は欧州の強豪ではなかった。弱いうえにつまらなかった暗黒時代 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by AFLO

審判の判定に助けられ2次リーグ進出

 スペインは、絶対に負けられない状況に追い込まれた。開催国が最初のステージで敗れた過去はないというW杯の歴史的ジンクスもプレッシャーとなった。

 そのタイミングで事件は起きた。前半14分、スペイン代表MFペリコ・アロンソが中盤をドリブルで前進。ペナルティエリアの1メートルほど手前で相手スイーパーのヴェリミール・ザイッチに足を引っかけられたことは事実だった。アロンソはしかし、そこからペナルティエリア内に激しくダイブする。するとあろうことかソーレンセン主審は、ペナルティスポットを指さしたのである。

 事件は続く。キッカーとして登場したレアル・ソシエダ所属(当時)のロペス・ウファルテは、このPKを枠外に外してしまう。するとソーレンセン主審が、今度はPKのやり直しを命じるという手段に出た。開催国をどうしても勝たせなければならない使命感に溢れていたと思えるような判定を繰り返したのだ。キッカーが蹴る前にGKドラガン・パンテリッチが動いたというのがその理由だった。

 スペインは2回目のPKをフアニートが決めて同点とし、後半21分、エンリケ・サウラのゴールで逆転勝ちを収めたが、スペインとユーゴ、どちらのほうがいいサッカーをしていたかと言えば、軍配は断然、ユーゴに上がった。

 筆者はこの試合をビルバオのバールで地元のバスク人たちとともに観戦していたが、彼らがスペインの勝利を最後まで見届けることなく、シラけた様子でお店を去っていく姿を、いまなお鮮明に記憶している。

 3戦目。スペインはついに敗戦を喫する。小国、北アイルランドに0-1で敗れたのだ。ユーゴと勝ち点で並んだが、総得点で1ポイント上回り、辛くも1次リーグを通過。2次リーグ(ベスト12)では、西ドイツに1-2で敗戦。イングランドに0-0の引き分けで敗退し、自国開催のW杯を終えた。

 何と言ってもサッカーが面白くなかった。スペインのサッカーは弱いうえにつまらない。1982年スペインW杯を通して、筆者の脳裏にはそう強くインプットされたのだった。
(つづく)

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