シャビ監督、クラシコの結果次第で窮地に。自ら説いたバルサイズムを放棄したのか

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Reuters/AFLO

「8億6500万ユーロ(約113億円)は投げ銭か? このままではチーム崩壊」

 スペイン大手スポーツ紙『アス』はそう見出しを打ち、FCバルセロナの危機を煽っている。大金をはたいた補強でテコ入れしたにもかかわらず、チャンピオンズリーグ(CL)で敗退の危機にあるだけに、大げさな表現ではない。

 CLグループリーグ第4節、バルサは本拠地カンプ・ノウにインテルを迎えたが、撃ち合いの末、3-3と引き分けている。他にプルゼニ、バイエルン・ミュンヘンと同組で、ここまで1勝2敗1分けと負け越しており3位。残り2試合、決勝トーナメント進出へ、赤に近い黄信号が灯った。

インテル戦で思わず目を覆うシャビ・エルナンデス監督(バルセロナ)インテル戦で思わず目を覆うシャビ・エルナンデス監督(バルセロナ)この記事に関連する写真を見る「前半はいい出来だったが、後半はミスが高くついた。ネガティブな評価だし、残酷な結果と言える」

 就任2年目のシャビ・エルナンデス監督は、守備面でイージーなミスが出たインテル戦をそう総括している。ジェラール・ピケのラインコントロールはあまりにも雑で、後半のプレーに昔日の面影はなかった。また、エリック・ガルシアのラウタロ・マルティネスへのマーキングはユースレベルで、簡単に置き去りにされていた。何より、前半ですら、多くの人が愛したバルサ本来の形だったとは言えなかった。

 もしシャビがバルサの選手に戻れたら、シャビ監督のもとでどのようなプレーをするのだろうか。その問いかけは、バルサの本質と未来に迫るものだ。

 シャビが選手としてバルサに数多くの栄光をもたらした時代と、現在のバルサのサッカーは中身が違っている。

 当時のバルサは、シャビだけでなくリオネル・メッシ、アンドレス・イニエスタなどラ・マシア(下部組織)出身選手を中心にした構成で、ボールをつなぎ、運び、仕掛けるところにオートマチズムを感じさせた。敵陣深くまでパスワークで攻め崩し、雷撃のようなドリブルからフィニッシュ。ボールを握って攻め続ける質を細部まで極めていた。それがスペクタクルの源泉だった。

 しかし、今のチームは控えめに言っても"大味"である。

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