ベルギー代表はカタールW杯で優勝をつかむか。デ・ブライネ、ルカクらタレントを揃えながらも「慎重で堅実な戦い」が伝統

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

ブラジル戦で見せた慎重な対策戦法

 ルカクのパワー、アザールのテクニック、デ・ブライネのインテリジェンスなど、周辺国で地位を築いた多様な特徴の選手を集めてみると、ベルギーは大国のような何でもありのスケール感のチームに変貌した。

 2018年ロシアW杯、グループリーグのベルギーは攻撃型のオールスターチームとしてスタートしている。ルカクの1トップにドリース・メルテンスとエデン・アザールの2シャドー、MFの中央にデ・ブライネとヴィツェル。左のウイングバックはドリブラーのヤニック・カラスコだった。

 ところが、準々決勝のブラジル戦ではメンバーも構成もガラリと変えている。2-1でブラジルを破った試合はこの大会のベストマッチの1つであり、ベルギーらしさがよく表れたゲームでもあった。この場合の「らしさ」は従来型の慎重なベルギーだ。

 実は4年前のブラジルW杯もほぼ同じ経緯を辿っている。攻撃のタレント満載でスタートして、途中で守備型に軌道修正しているのだ。2018年のブラジル戦もこの試合限定の戦術だった。つまり、相手に合わせて自分たちの戦い方を決める慎重策である。

 GKティボ・クルトワとアルデルワイレルト、ヴァンサン・コンパニ、フェルトンゲンの3バックはそのままだが、MFはマルアン・フェライニ、ヴィツェル、ナセル・シャドリの3ボランチに変化。さらに前線はルカクとアザールが左右に張って、デ・ブライネが「偽9番」という奇策。ウイングバックが右のトーマス・ムニエだけという変則だった。

 ブラジルの強みである、左サイドを意識した布陣である。マルセロ、コウチーニョ、ネイマールのトライアングルへの対策だ。ブラジルの3人にはムニエ、フェライニ、アルデルワイレルトが迎撃する。

 ただ、それだけでなく返す刀で斬りつける準備をしているのがベルギーらしかった。ブラジルの左サイドバック・マルセロと対面するルカクは、マルセロをマークしないのだ。マルセロを泳がせ、ブラジルの左の3人に攻め込ませる。そして奪ったらルカクがマルセロの背後をつく。

 ルカクが怖いのでブラジルの左センターバックのミランダは左へ寄る。相方のチアゴ・シウバは中央を1人でカバーする形になった。アザールも左に張りっぱなしだったからだ。ルカクとアザールのピン止めによって、デ・ブライネが使えるスペースが広がっていた。

 前半はこの作戦がまんまと奏功。後半はブラジルに反撃されたが何とか逃げきって勝利した。もし、ベルギーが「自分たちのサッカー」にこだわっていたら、ブラジルを倒すことはできなかっただろう。

 それまでの攻撃的なスタイルで押しきろうとするのではなく、まずは相手の長所を潰して逆襲という発想の下、おそらく数日で用意した、緻密でけっこう複雑かつ面倒くさい作戦をきっちり実行する。この慎重さ、悪い言い方をすれば小心なところがベルギーらしく、ここに彼らの本領と強さがあった。

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