ファン・ハール断言。オランダ伝統の4−3−3で勝つのは「難しい」。がん闘病中の名将はカタールW杯で有終の美を飾れるか (5ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by AFLO

2020年末に前立腺がんが発見

 本大会に向けてオランダは、ベルギー、ポーランド、ウェールズと戦うネイションズリーグで、6月に4試合、9月に2試合戦いながら3−4−1−2の作り込みに励む。ネイションズリーグは強化試合としてレベルの高さが魅力的な一方、他大陸との試合を経験しないまま本大会を迎えることになる。

 4月4日、スポーツジャーナリストのフンベルト・タンがホストを務めるトーク番組『フンベルト』のゲストとして、自身のドキュメンタリー映画『ルイ』の告知も兼ねて出演したファン・ハールは、2020年12月に前立腺がんが見つかって2021年1月から放射線治療を続けていることを明らかにした。

 この告白に、オランダ国民はショックを受けている。ファン・ダイク主将もそのひとり。チャンピオンズリーグの試合前会見で「今度のワールドカップは忘れることのできないものにしたい」と誓った。

 最近、ファン・ハール監督が「スピリッツ」という言葉を頻繁に使っていることが気にかかっていた。「ハードワークとスピリッツは違う。スピリッツには、チームへのコミットメントが含まれている」といった具合だ。実は、本人ががんに打ち勝とうと闘志を燃やしていたのだ。

 オランダの報道では「KNVB(オランダサッカー協会)は万が一、ファン・ハールの健康がすぐれずカタールで指揮を執ることができなくなった場合、監督候補になっているロナルド・クーマンの早期就任に乗り出す(※その後、2023年1月に就任することが正式決定)」「KNVBはファン・ハールが病気治療中であることを知って契約した。プランBはない」と両論がある。

 なによりも、まずは氏の健康回復を祈りたい。

5 / 5

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る