ファン・ハール断言。オランダ伝統の4−3−3で勝つのは「難しい」。がん闘病中の名将はカタールW杯で有終の美を飾れるか (4ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by AFLO

カタールW杯で対戦する3カ国

 また、主力選手が所属チームで出番に恵まれないことも気にかかる。

 デンマーク戦で2ゴール、途中出場のドイツ戦でも値千金のゴールを決めたベルフワインは、トッテナムで試合にこそ出ているものの出場時間があまりに短い。「今のコンディションでは2試合続けて先発は無理」とファン・ハール監督に判断され、ドイツ戦のスタメンを回避された。

 マンチェスター・シティでの出番が少ない左CB兼左WBのナタン・アケも、ドイツ戦は途中出場だった。エースのデパイはオランダ代表では絶対的な存在だが、選手層の厚くなったバルセロナにおいて負傷後はレギュラー争いで厳しい立場に立たされている。

 ファン・ハール監督は持論を曲げてでも、クラブでの出場機会に乏しい選手を代表チームで抜擢せざるを得ない。パリ・サンジェルマンで問題を抱えるMFジョルジニオ・ワイナルドゥムも練習でのパフォーマンスが上がらず今回はレギュラーから外れてしまい、途中出場の一度しかプレーできなかった。

 28歳で初キャップを獲得したGKマルク・フレッケン(フライブルク)は、足もとのうまさから「LvGキーパー(ファン・ハール好みのGK)」と呼ばれている。今回は2試合で3失点を喫したことから、評価は保留といったところか。GKは層が極めて薄いだけに、フレッケンに対する注目は今後も高そうだ。

 ドイツ戦で左WBとして先発に抜擢されたタイレル・マラシア(フェイエノールト)は3度目のキャップを記録。今季フェイエノールトの監督に就任したアルネ・スロット監督の指導のもと、「感覚的な左SB」から「戦術眼に秀でた左SB」へ進化を遂げた22歳だ。

 前半のデュエルであばらを痛めて74分でベンチに下がったが、「マラシアはよかった。痛みさえなければもっと長く使いたかった」と、ファン・ハール監督から高評価を得た。オランダリーグ勢の欧州カップ戦での活躍は、このような形で代表チームの底上げにつながっている。

 ワールドカップ抽選会の結果、オランダはグループAでカタール、セネガル、エクアドルと戦うことになった。帰化選手の存在が不気味なカタール、アフリカ王者のセネガル、熾烈な南米予選を4位で突破したエクアドルと、曲者が揃っている。だが、グループ首位突破はオランダが本命と言えるだろう。

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