ユベントスに何が起きているのか。成績低迷と不正決算疑惑の背後にあるもの

  • パオロ・フォルコリン●文 text by Paolo Forcolin
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 嵐の海に漂う船を想像してほしい。大きな波が押し寄せ、転覆の危険さえはらんでいる。翻弄される船の名前はユベントス。イタリアで最も愛され、最も多くの優勝回数を誇るチームだ。船を飲み込もうとする波には2つの種類がある。ひとつはピッチ上。もうひとつは司法によるもので、どちらの波もあり得ないほど荒い。

 2011-12シーズンから2019-20シーズンまで、ユベントスは国内では向かうところ敵なし、つねにスクデットを勝ち取ってきた。連覇は9年に及び、これほど勝ち続けたチームはイタリアサッカー史になかった。

 最初の3連覇はアントニオ・コンテのもとで成された。コンテは前年7位と低迷していたチームを優勝できるまでに返り咲かせた。続く5連覇はマッシミリアーノ・アッレグリの指揮下で、最後の優勝はマウリツィオ・サッリのもとでだった。

 それにしても、なぜ勝ち続けていたアッレグリをわざわざ変えたのか。ユベントスのトップは5連覇という成績には満足していたが、そのプレースタイルには不満があった。彼らはもっと見ごたえのあるサッカーを望んでいた。サッリであれば、プレーと結果の両方の希望を満たしてくれると思ったのだ。

 しかし、その目論見ははずれた。サッリのチームは勝利こそしたが(2位のインテルとはたった1ポイント差だった)、クラブが求めていた活気あるプレーは見ることができなかった。そこでサッリも解任され、今度はサポーターを高揚させるような人事をたくらむ。マエストロことアンドレア・ピルロが監督として帰ってきたのだ。

 だが、監督経験のない彼に、この突然の大役は重すぎた。チームは「ベル・ジョーコ(美しいプレー)」がないばかりか、10連覇も実現できず、4位に終わった。そこでピルロは更迭され、少なくとも結果は保証済みだったアッレグリが戻ってくることになった。

渋い表情のマッシミリアーノ・アッレグリ監督とキャプテンのレオナルド・ボヌッチ photo by Reuters/AFLO渋い表情のマッシミリアーノ・アッレグリ監督とキャプテンのレオナルド・ボヌッチ photo by Reuters/AFLOこの記事に関連する写真を見る ところが、このアッレグリ第二幕は、これ以上はないほどの最悪のスタートを切ってしまった。第15節終了時点で、ユベントスはトップのナポリと12ポイント差の7位。チャンピオンズリーグ(CL)出場圏(4位)までも7ポイントの差がある。CLに出るか出ないかはプライドの問題だけでなく、経済的にも大きな問題だ。絶対に手に入れなければいけない。

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