ユベントスに何が起きているのか。成績低迷と不正決算疑惑の背後にあるもの (3ページ目)

  • パオロ・フォルコリン●文 text by Paolo Forcolin
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

7 最後に一番無視できない要因。それはクリスティアーノ・ロナウドが去ったことだ。ほぼ寝耳に水のような形で彼はマンチェスター・ユナイテッドに移籍してしまった。ここ3年間、彼は1試合につき平均1ゴール近くを決めていた。彼の存在が、ユベントスが抱える様々な問題をこれまでどうにかカモフラージュしていたのだ。しかし、ロナウドがいなくなった今、問題はあますことなく明るみにさらされることとなった。

 そのほか、小さな理由を挙げたらきりがない。ではこれらは誰のせいなのか。

 イタリアには「魚は頭から腐ってくる」という諺がある。つまり主な責任は、アンドレア・アニエリ会長、パべル・ネドベド副会長をはじめとしたチーム幹部にある。彼らはここ数年、明らかにチーム作りに失敗していた。
 
 そしてチーム幹部たちの責任は、もうひとつの大きな波にも関係する。

 ユベントスは現在、ここ数年の決算報告に偽装の疑いがあるとして、検察の調査を受けている。これはサッカーチームというより、上場企業に対する調査だ。通話の盗聴や家宅捜査なども行なわれ、その結果、キャピタルゲインを利用して決算を操作しているとされている(いまだ調査中なので断定はできない)。キャピタルゲインとは、一般的には資産価値の上昇による利益のことを指すが、ここで問題になっているのは選手の売買における利益だ。

 たとえば、もし私がXという選手を2000万ユーロで獲得し、1年後に5000万ユーロで売却したとしよう。この場合のキャピタルゲインは3000万ユーロで、私はこの収益を決算報告書に載せる必要がある。また私の下部組織に優秀なYという若手選手がいたとしよう。彼をトップチームにデビューさせたところ活躍し、私は彼を6000万ユーロで売却した。この場合のキャピタルゲインは6000万すべてとなる。なぜなら私はこの選手の獲得に一銭も支払っていないからだ。

 では、どこに詐欺の要素があるのか(もしくはその可能性があるのか)。サッカーの世界では、選手に簡単に偽の価値を与えることができる。たとえば、私が気に入っている選手が他のチームにいて、その価格(移籍金)が2000万ユーロだったとする。だが、私は相手のチームに金では払わず、自分のチームにいる2人の若手選手との交換を申し出る。彼らの額はひとりが1500万、もうひとりが500万ユーロだ。これで両者は等価となる。

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