メッシ不在のクラシコ。新10番アンス・ファティと補強組はバルサ復活の救世主になりうるか

  • text by Michiko Yamamoto
  • photo by Rafa Huerta

メッシの後継者として10番を背負う、バルサのアンス・ファティ(左)メッシの後継者として10番を背負う、バルサのアンス・ファティ(左)この記事に関連する写真を見る メッシのいないクラシコがやってくる。

 1929年以来、実に246回繰り返され、811ゴールを生み出してきた伝統の一戦。この歴史ある試合の最多出場(45試合)を果たし、クラシコ史上最多得点王(26得点)でもあるリオネル・メッシが、10月24日、カンプノウで行なわれるこの戦いにいないことには誰もが一抹の寂しさを感じている。

 しかし、バルサのオランダ人指揮官、ロナルド・クーマンは、メッシ不在を誰もが忘れ去るような最高のプレーをホームで行ない、永遠のライバルを倒し、堂々と勝利を手にして起死回生の道を歩む......といったイメージをしているかもしれない。

 なんと言っても、現在(10月23日時点、以下同様)、バルサは他クラブより1試合少ないとはいえ、リーガで7位、チャンピオンズリーグではグループ内3位とまさかのグループリーグ敗退もありうる背水の陣で、2021年の初クラシコを迎えるのだ。

 ただ、バルサファンにとって楽観を呼び込む要因となっているのが、メッシの後継者、背番号10番をつけて立つアンス・ファティの存在だ。

 バルサの育成組織ラ・マシアに、わずか10歳の時にやってきたギニアビサウ生まれの逸材は、ユース時代からその才能を余すことなく発揮してきた。16歳でトップチームデビューを果たすも、その後、2度の重度の負傷により、継続してプレーができずにいた。しかし先月26日、リーガのレバンテ戦で323日ぶりにピッチに立ち、その10分後には、今季初得点を決めてみせた。バルサの期待の星が堂々と復帰してきたのだ。

 今年の夏、衝撃的な形でメッシがバルサを去ることになったあと、今季の背番号10番は欠番にという声も上がった。しかし、クラブ側の決断は早かった。メッシを「追い出さざるを得なかった」ことに対して起きた大ブーイングを前に、新たなヒーロー作りに方向転換したのだ。

 白羽の矢が立てられた18歳、アンス・ファティは、バルサファンが望む謙虚さと自信を兼ね備えている。

 今週、2027年まで契約更新したことが発表され、その際に、背番号10番を背負うことになったことについて、それを許してくれたキャプテンやクラブへの感謝を述べる一方で、「僕はバルサにいるのだから、全てにおいて覚悟ができている。10番を背負う準備もできている。10番をつけるのは僕にはプレッシャーにはならない。モチベーションのひとつになる」と言ってのけて、サポーターを痺れさせた。

 週末に時間があれば、ホームのバルサBの試合観戦に顔を出すなど、生粋のバルサファンであることもサポーターに愛される要因だ。それを自然体でやってのけるアンス・ファティが大器であることに違いはないが、まだその若さでメッシの重荷を全て背負わせるわけにはいかない。

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