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五里霧中のレアル、「何もない」バルサ。CLで露呈したスペイン2強の惨状 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

 当時、それは唯一無二の画期的なサッカーだった。日本を発ち、欧州各地でいろいろなサッカーを観戦した後、カンプノウの記者席に座って俯瞰すれば、他では拝めなかった絶景が広がっていたものだ。世の中にはこんなサッカーがあったのかと、訪れるたびに感激に浸ったものだ。

 その中にはクーマンもいた。ディフェンスの重鎮として、センターバックのポジションから、両ウイングの鼻先へ、高速の対角線キックをバシバシ決めていた。実際にクーマンに話を聞けば、筆者にもクライフが標榜する攻撃的サッカーについて、積極的に語ってくれたものだが、そのクーマンが指揮を執るバルサの現在のサッカーは、攻撃的と言えるものではない。勝利を欲した現実的なサッカーになり下がっている。

 むしろ守備的だ。このベンフィカ戦も、初戦のバイエルン戦も、クーマンは3バックを採用している。バルサは、クライフ時代のみならず、ルイス・ファン・ハール時代にも、グアルディオラ時代にも、たびたび3バックで戦っているが、それとは全く別物の、ひと言でいえば守備的な3バックである。

 そのうえ、左右非対称だ。メンフィス・デパイとルーク・デ・ヨングで組むその3-4-1-2の2トップは完全に左に傾いていて、左ウイング(デパイ)とCF(ルーク・デヨング)の関係にあった。右サイドはウイングバック(セルジ・ロベルト)1人しかいなかった。そこはつまり、相手に押し込まれる穴となっていた。

「監督ありき」は、言い換えれば哲学ありきとも言い表せる。攻撃的サッカーを標榜する哲学的な集団。それがバルサだった。現地で記者や監督を含む評論家に話を聞けば、攻撃的サッカーとは何かを、口角泡を飛ばしながらレクチャーしてくれたものだ。

「いまのバルサには何もない」と言えば、失礼か。この惨状をクライフは草葉の陰からどう見ているか、聞いてみたいものである。

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