サッカーで五輪連覇のブラジルが大歓喜の事情。マラカナンの屈辱を東京で晴らした (3ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

◆メダルダッシュで「アリガトウ」? 世界各国は東京五輪をこう見ていた

 もちろん、ブラジルは簡単に決勝までたどり着いたわけではなかった。グループステージでは、因縁のドイツ相手にリシャルリソンのハットトリックなどで4-2と大勝したが、次のコートジボワールとはスコアレスドロー。「ゴールのストックをすべてドイツ戦で使い果たした」と揶揄された。

 一方、スペインはすばらしいプレーを見せて勝ち上がっていた。アルゼンチンをグループリーグで家に送り返し、ブラジルが得点できなかったコートジボワール相手には5点を決めている。ペドリなど、次世代を担う選手たちも台頭してきた。

 決勝も、チーム力でいえばスペインのほうが上だっただろう。ボールポゼッションも54%とスペインのほうが高かった。しかし、試合の明暗を決めたのはブラジルの個人技だった。この大会ブレイクしたマテウス・クーニャ。そしてそのクーニャに代わって延長から入り、決勝ゴールを決めたマウコム。マウコムはベンチスタートにもかかわらず、MVP級の活躍を見せた。そしてマウコムのゴールにアシストしたアントニー。彼の足技には世界中が注目しただろう(余談だが彼は大会後、金メダルそっくりのタトゥーを入れた)。

 また、この勝利はカタールW杯への希望となった。現在の代表に、ブラジル人は苛立ちを感じていた。なかなかタイトルを手に入れることができず、CBF(ブラジルサッカー連盟)との根の深い確執も影を落とす。だからこそ、そこに台頭してきた新しい世代に人々は歓喜したのだ。「新たな革命が起こった」と称賛するメディアもあった。

 そして、日本はブラジルサッカーにとって、幸運な場所であることが証明された。2002年の日韓W杯の優勝に続き、東京オリンピックで金メダルを勝ち取ったのだ。日本とブラジルのサッカーは昔から深く結びついている。何かそれとも関係しているのではないかとも感じさせる出来事だった。

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