サッカーで五輪連覇のブラジルが大歓喜の事情。マラカナンの屈辱を東京で晴らした
ブラジルの連覇で幕を閉じた東京五輪男子サッカー。それがブラジル国民にどれだけの歓喜をもたらしたかを理解するためには、さらに1カ月ほど、さかのぼる必要がある。コパ・アメリカ決勝だ。
初めて代表でのタイトルを手にしたリオネル・メッシと、それをハグして祝うネイマール。世界では美談ばかりが伝わっているようだが、実は地元ブラジルでは誰もがこの結果に怒り心頭だった。
オリンピック連覇を成し遂げたU-24ブラジル代表 photo by JMPAこの記事に関連する写真を見る コロナ禍の中で突然のブラジル開催となったこともあり、複雑な思いをコパ・アメリカに抱いていたブラジル人だが、この決勝には期待していた。ネイマールは好調だし、なにより相手は永遠のライバル、アルゼンチンだ。多少しらけ気味だったコパ・アメリカを取り巻く空気が一気にヒートアップ。「ブラジルのスタメンの年俸の合計は、アルゼンチンのそれの2倍!」などの煽り記事が新聞を賑わせ、多くの人々がブラジルの連覇を期待した。
しかし、結果はアルゼンチンが1-0で勝利した。ただし、もしこれが好試合であったなら、ブラジル人もこれほどまでに腹を立てたりはしなかっただろう(もちろん怒ることは怒っただろうが)。
ブラジルは、前半は54%、後半は72%のボール保有率を誇った。その他の数字、シュート数もパス成功率も全てブラジルがアルゼンチンを上回っていた。それまで好調だったメッシも、決勝では何も見せてはくれなかった。開始10分にアンヘル・ディ・マリアがカウンターで先制した以外、何も起こらなかった。
データによるとアルゼンチンは試合中の選手交代に、合計で6分もの時間をかけている。またアルゼンチンの選手はブラジルの選手と接触する度に倒れ込み、アルゼンチンの選手がピッチに寝そべっていた時間は計8分にもなった。
一方、ブラジルはメンタル的にとても弱かった。早々に先制されると、皆が失望した顔でプレーしていた。ブラジルのGKエデルソンはほとんど手を使わず、足ばかり使っていた。それは仲間からのバックパスが非常に多かったことを意味する。
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