メッシが典型、現代サッカーでのインサイドFWの重要性。カギは「斜め」の攻撃だ
サッカー新ポジション論
第1回:インサイドフォワード
サッカーのポジションや役割は、時代と共に多様化し、変化し、ときに昔のスタイルに戻ったりもする。現代サッカーの各ポジションのプレースタイルや役割はどうなっているのか。これを知ると、サッカー観戦がより面白くなる。
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サッカーで大量に得点できるのは、メッシのようなインサイドフォワードだこの記事に関連する写真を見る<イタリアの2人のインサイドハーフ>
1年延期された先のユーロ2020で優勝したのは、従来のイメージを一新した攻撃的なイタリアだった。象徴的なのが、インサイドハーフでプレーする選手を2人起用したこと。ロレンツォ・インシーニェとニコロ・バレッラである。
イタリアと言えば「カテナチオ」。堅守速攻がアズーリ(イタリア代表の愛称)の一般的なイメージではある。
カテナチオは1930年代のスイスが発祥とされている。オーストリア人のカール・ラパンという選手が、スイスリーグで世界初の「リベロ」としてプレーしたのが起源らしい。
当時の2バックの後方で左右に動いてカバーリングするプレーが「差し錠」に似ているというので、フランス語で「ヴェルウ」と呼ばれたのが、そのままイタリア語の「カテナチオ=閂(かんぬき)」となった。
なので、リベロがいなければカテナチオではない。イタリアでは1990年イタリアW杯のフランコ・バレージが最後の本格的リベロだから、カテナチオと呼べるのはそのあたりまでになる。ただし、「まず守備から」というプレースタイルは、その後も根強く残っていた。
現在のイタリアは、歴史上でも画期的な攻撃型のチームと言われているが、偶然なのか伝統を守っているところもある。サイドバック(SB)タイプが左サイドだけ、中盤の底にレジスタ(司令塔)を置き、ウイングタイプが右サイドだけなのがそうだ。しかし、昔とまったく違っているのが、インサイドハーフを2人起用しているところである。
イタリア代表で、インサイドハーフは1人かゼロが通例だった。カテナチオ時代には、リベロがいて、マンマーク要員が4人、MFの1人もいわゆる「水を運ぶ人」。攻撃要員は2トップとワーキングウインガーと司令塔の4人。つまり、守備にリソースを割きすぎていたので、インサイドハーフを置く余裕がなかったわけだ。
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