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メッシが典型、現代サッカーでのインサイドFWの重要性。カギは「斜め」の攻撃だ (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

 だが、ユーロ2020の王者は違った。ボールを保持して攻める気まんまん。攻め込んで点をとるには、ハーフスペースに優れた選手を置きたい。というわけでインシーニェとバレッラをここでプレーさせた。

 カテナチオ方式とは、そもそもの考え方が真逆なのだ。

<ハーフスペースが重要>

 フィールドを縦に5つに分けた「5レーン」はポジショナルプレーの説明でよく使われる。もう現在のサッカーでは、だいたい常識と言っていいと思う。この5レーンの左右の一番外から1つ内側のレーンが「ハーフスペース」だ。

 では、攻撃型のチームはなぜハーフスペースに人を配置したいのか。

 簡単に言えば、相手ゴールへのアプローチが「斜め」になるだからだ。センターフォワード(CF)へパスを送りたいが、真ん中からだと間に相手がいるケースが多い。しかし、斜めの関係だと意外とパスコースを見いだせる。

 ハーフスペースから外へ展開するのも斜め。そしてカットインからシュートするのも斜め。斜め方向のプレーがゴールに近づくのである。だから、ハーフスペースに斜めのプレーが得意で、最もテクニックと攻撃力に優れた選手を置くのが得になるわけだ。

 1960年代あたりまでは、このポジションはインサイドハーフではなく、インサイドフォワード(FW)と呼ばれていた。当時はFWが5人編成だったので、CFとウイングの中間にいるからインサイドFW。実際、現在でもハーフというよりFW的な選手が多い。

 イタリアの場合、バレッラは常時インサイドハーフの位置にいるが、インシーニェのほうは左ウイングの位置から中に入ってプレーする。守備は左の大外のレーン担当で、攻撃時にハーフスペースに入って行くのだ。このとき左外でウイングと化すのがSBのレオナルド・スピナッツォーラだった。

 インシーニェは、カットインから右足でファーポストへ巻いていくシュートが十八番、ラストパスも上手で、まさに斜めにプレーするための選手だ。バレッラは右のハーフスペースで頑張って守備をするが、インシーニェは左ウイングで守備は少しだけラクをしている。ずっと動き続けるより、ここぞという時に強度の高いプレーで貢献するFW的なキャラクターと言える。

 インシーニェだけでなく、多くのチームでもウイングが攻撃時にインサイドハーフ化している。チームによって片方だけのこともあるし、両ウイングともの場合もある。

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